天部に含まれるすべての天,竜王,諸神,薬叉(夜叉),冥官,星宿などのそれぞれを代表する天部十二尊の総称。12の天部は四方(東西南北)と四維(南東,南西,北西,北東)の8方と上方,下方の10方位に配置される十尊と日天(につてん),月天(がつてん)である。すなわち,帝釈天(たいしやくてん)(東),火天(かてん)(南東),閻魔天(えんまてん)(南),羅刹天(らせつてん)(南西),水天(すいてん)(西,バルナ),風天(ふうてん)(北西),毘沙門天(びしやもんてん)(北),伊舎那天(いしやなてん)(北東),梵天(ぼんてん)(上),地天(ちてん)(下),日天,月天となる。十二天像は画像で表現される。1幅に1尊を描き12幅一組とする十二天像は宮中の真言院で行われる後七日御修法(ごしちにちみしゆほう)に用いるもので,京都国立博物館本(1127。国宝,教王護国寺旧蔵)が伝わり,西大寺本(平安前期)もその作例と推定される。また,平安時代中ごろからは,伝法灌頂の儀式に十二天屛風を用いた。六曲一双屛風の12扇すべてに立像の十二天を1尊ずつ描くもので,教王護国寺,神護寺,聖衆来迎寺に優作が伝わる。その他,不動明王を中尊として描かれる別尊曼荼羅のうち,十二天曼荼羅や安鎮法曼荼羅の外院に表される。
執筆者:関口 正之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
世界を守護する12種の天神。八方天と上下の天と日月とからなる。(1)東方の帝釈天(たいしゃくてん)(インドラIndra)、(2)南方の焔魔天(えんまてん)(ヤマYama)、(3)西方の水天(バルナVaruna)、(4)北方の毘沙門天(びしゃもんてん)(バイシュラバナVaiśravaa、クベーラKuvera)、(5)東南方の火天(アグニAgni)、(6)西南方の羅刹天(らせつてん)(ラークシャサRākasa)、(7)西北方の風天(バーユVāyu)、(8)東北方の伊舎那天(いしゃなてん)(イーシャーナĪśāna)、(9)上方の梵天(ぼんてん)(ブラフマーBrahmā)、(10)下方の地天(ちてん)(プリティビーPthivī)、(11)日天(にってん)(スーリヤSūrya)、(12)月天(がってん)(チャンドラCandra)をいう。密教ではこれらの神を壇の上に配し、護摩(ごま)をたいて供養し、加護を祈る。これを十二天法(十二天供(てんく))という。京都・東寺と奈良・西大寺の画像は有名。
[定方 晟]
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