十二天(読み)じゅうにてん

精選版 日本国語大辞典 「十二天」の意味・読み・例文・類語

じゅうに‐てん ジフニ‥【十二天】

仏語。一切の天龍鬼神星宿冥官を統(す)べて世を護る一二の神。四方・四維の八天に、上下の二天および日・月の二天を加えたもの。東に帝釈天、東南に火天、南に閻魔天、西南に羅刹天、西に水天、西北に風天、北に多聞天毘沙門天)、東北に大自在天、上に梵天、下に地天、および日天、月天の総称。〔伊呂波字類抄(鎌倉)〕

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デジタル大辞泉 「十二天」の意味・読み・例文・類語

じゅうに‐てん〔ジフニ‐〕【十二天】

仏教を守護する12の天尊。四方・四維の八天、上・下の二天、日・月の二天のこと。帝釈天たいしゃくてん(東)・火天南東)・閻魔天えんまてん(南)・羅刹天らせつてん南西)・水天(西)・風天(北西)・毘沙門天びしゃもんてん(北)・伊舎那天いしゃなてん(北東)、梵天ぼんてん(上)・地天(下)、日天(日)・月天(月)。

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改訂新版 世界大百科事典 「十二天」の意味・わかりやすい解説

十二天 (じゅうにてん)

天部に含まれるすべての天,竜王,諸神,薬叉夜叉),冥官,星宿などのそれぞれを代表する天部十二尊の総称。12の天部は四方(東西南北)と四維(南東,南西,北西,北東)の8方と上方下方の10方位に配置される十尊と日天(につてん),月天(がつてん)である。すなわち,帝釈天たいしやくてん)(東),火天(かてん)(南東),閻魔天(えんまてん)(南),羅刹天(らせつてん)(南西),水天(すいてん)(西,バルナ),風天(ふうてん)(北西),毘沙門天(びしやもんてん)(北),伊舎那天(いしやなてん)(北東),梵天(ぼんてん)(上),地天(ちてん)(下),日天,月天となる。十二天像は画像で表現される。1幅に1尊を描き12幅一組とする十二天像は宮中の真言院で行われる後七日御修法(ごしちにちみしゆほう)に用いるもので,京都国立博物館本(1127。国宝,教王護国寺旧蔵)が伝わり,西大寺本(平安前期)もその作例と推定される。また,平安時代中ごろからは,伝法灌頂の儀式に十二天屛風を用いた。六曲一双屛風の12扇すべてに立像の十二天を1尊ずつ描くもので,教王護国寺,神護寺,聖衆来迎寺に優作が伝わる。その他,不動明王を中尊として描かれる別尊曼荼羅のうち,十二天曼荼羅や安鎮法曼荼羅の外院に表される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「十二天」の意味・わかりやすい解説

十二天
じゅうにてん

世界を守護する12種の天神。八方天と上下の天と日月とからなる。(1)東方の帝釈天(たいしゃくてん)(インドラIndra)、(2)南方の焔魔天(えんまてん)(ヤマYama)、(3)西方の水天(バルナVaruna)、(4)北方の毘沙門天(びしゃもんてん)(バイシュラバナVaiśravaa、クベーラKuvera)、(5)東南方の火天(アグニAgni)、(6)西南方の羅刹天(らせつてん)(ラークシャサRākasa)、(7)西北方の風天(バーユVāyu)、(8)東北方の伊舎那天(いしゃなてん)(イーシャーナĪśāna)、(9)上方の梵天(ぼんてん)(ブラフマーBrahmā)、(10)下方の地天(ちてん)(プリティビーPthivī)、(11)日天(にってん)(スーリヤSūrya)、(12)月天(がってん)(チャンドラCandra)をいう。密教ではこれらの神を壇の上に配し、護摩(ごま)をたいて供養し、加護を祈る。これを十二天法(十二天供(てんく))という。京都・東寺と奈良・西大寺の画像は有名。

[定方 晟]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「十二天」の意味・わかりやすい解説

十二天
じゅうにてん

仏教を守護する 12の天尊。八方の方位と天・地を守護する神,ならびに日・月の2天を加えたもので,インド神話の神々が取入れられている。梵天,地天,日天,月天,帝釈天焔摩 (えんま) 天,水天 (→バルナ ) ,毘沙門天,火天,羅刹天,風天,伊舎那天 (あるいは大自在天 ) の 12神。このうち帝釈天以下は,東から北への八方に入るとされ,八方天とも呼ばれる。日本での遺品として奈良西大寺の仏画 (平安時代初期) ,教王護国寺の宅磨勝賀筆『十二天像』の屏風 (鎌倉時代初期) が著名。

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とっさの日本語便利帳 「十二天」の解説

十二天

仏教で、上下、日月、四方、四維を守る天衆。▽梵天(上)、地天(下)、日天(日)、月天(月)、帝釈天(たいしゃくてん。東)、焔摩天(えんまてん。南)、水天(西)、毘沙門天(北)、火天(東南)、羅刹天(らせつてん。西南)、風天(西北)、伊舎那天(いしゃなてん。東北)

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