セルトリウス(読み)せるとりうす(英語表記)Quintus Sertorius

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セルトリウス」の意味・わかりやすい解説

セルトリウス
Sertorius, Quintus

[生]前123頃.ヌルシア
[没]前72. ヒスパニア
古代ローマの政治家。ヒスパニアの反乱指導者。法学,修辞学を学び,前 105,前 102年2度ガリア人と戦う。前 83年法務官 (プラエトル ) 。 G.マリウスを支持して L.スラに追われヒスパニアからアフリカへ逃れた。ルシタニア人の声望を得て蜂起,前 80~77年ヒスパニアのほぼ全域を支配。地中海海賊,東方のミトラダテス6世と連絡して,ローマに対抗したが,ローマそのものよりもスラ派に対する反乱を意図し,ヒスパニアにおいてはローマの将軍としてふるまい,反スラ派のローマ人,イタリア人の支持を得た。また常に白い子じかを伴いダイアナ女神の加護あることを示し,人心を得ていたが,前 76年以後ポンペイウス (大ポンペイウス) と戦いを交え,前 74年大敗を喫し,次第に人気を失い,暗殺された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「セルトリウス」の意味・わかりやすい解説

セルトリウス
せるとりうす
Quintus Sertorius
(前122―前72)

古代ローマ、共和政末期の将軍、政治家。イスパニアを舞台に反ローマ運動を指導した。騎士の家に生まれ、聡明(そうめい)と雄弁で知られる。マリウス派(民衆派)に属し、上イスパニア総督に任命されたが(前83)、スラに追放されてアフリカに逃れ、ルシタニア人に招かれてふたたびイスパニアに上陸した(前81)。原住民の要求を理解し、土着諸部族の支持を得て、追放された民衆派ローマ人とともに、ここに独自の元老院を設け、海賊やポントスミトリダテスと同盟してローマと対決した。派遣されたローマ軍をゲリラ的戦闘でしばしば破ったが、紀元前74年ごろからメテルス、ポンペイウス指揮下のローマ軍の攻勢で、不利な状況に追い込まれ、前72年に部下によって暗殺された。

[土井正興]

『河野与一訳『プルターク英雄伝 セルトリウス』(岩波文庫)』

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