改訂新版 世界大百科事典 「セルトリウス」の意味・わかりやすい解説
セルトリウス
Quintus Sertorius
生没年:?-前72
サビニ族出身のローマの政治家。対キンブリ,テウトニ戦,スペイン住民討伐等で現地通ぶりを発揮した。護民官に立候補したが,スラの妨害を受け,内乱ではマリウス派に参加,しかしその恐怖政治には嫌悪を示した。スラ軍がローマ市に迫った前83年,海外拠点を求めて総督としてスペインに赴任。一時はスラ派の討伐軍のためマウレタニアに追われたが,ここで王族内紛に関与して勢力を得,スペインに帰還した。名将としてのカリスマ性とローマ文化普及策で原住民掌握に成功し,ゲリラ的戦術でスラ派の総督を破ってこの地にマリウス派亡命政権を樹立。キリキアの海賊やマウレタニア人と結び,ポントス王ミトリダテス6世とも同盟して10年近くローマの寡頭派政権に対抗したが,前72年閉塞状況の中で仲間に暗殺され,その直後ポンペイウスの攻撃で一党は壊滅した。原住民間の人気にもかかわらず,彼の目標はあくまでも〈ローマによる〉正義の支配であり,不服従者には過酷だった。
執筆者:栗田 伸子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報