セント・ヘレンズ火山(読み)せんとへれんずかざん(英語表記)Mount Saint Helens

日本大百科全書(ニッポニカ) 「セント・ヘレンズ火山」の意味・わかりやすい解説

セント・ヘレンズ火山
せんとへれんずかざん
Mount Saint Helens

アメリカ合衆国、ワシントン州南部、カスケード山脈にある活火山標高2549メートル。玄武岩、安山岩などの成層・円錐(えんすい)火山。1831~57年に数回噴火。1980年3月20日から地震続発、27日から水蒸気爆発が反復し、北斜面がしだいに膨れていった。5月18日、地震に続いて山体崩壊がおこり、岩屑なだれが発生した。岩屑なだれには爆風ブラスト)が先行し、600平方キロメートルの森林をなぎ倒した。この山体崩壊は連続する3波としておきたが、直後にデイサイトマグマのプリニー式噴火が続いた。この爆発によって大量の軽石火山灰成層圏までもたらされた。火山爆発指数は5。山体崩壊によって、2975メートルあった標高は400メートル以上低下。死者は約80人。噴出物総量約3立方キロメートル、噴煙は高さ2万メートルを超え、火山灰雲は約11日で北半球を一周。成層圏に達した火山灰雲がしだいに広く地球を覆い、直達日射量が減少した。その後も噴火を続け、噴煙の高さ1万メートル以上の爆発も同年内に数回、82、83年に各1回発生した。プリニー式噴火の後、馬蹄(ばてい)形(U字形)にくぼんだ火口底では溶岩円頂丘溶岩ドーム)の成長や小爆発が繰り返され地震活動も続いたが、86年にはほぼ収まった。この山体崩壊は、地下に貫入した溶岩ドーム(潜在ドーム)が火山体上部を不安定にしたため発生したと考えられている。その後2004年末に噴火が再開し、火道で固まりかけていたと考えられる溶岩が押し出されて新たな溶岩ドームが形成された。なお、1980年の噴火現象によって山体崩壊に関する知識が飛躍的に増し、世界の多くの火山で山体崩壊が過去に発生したことがわかってきた。

諏訪 彰・中田節也]

『パトリシア・ローバー著、千葉とき子訳『大噴火とよみがえる自然』(1993・評論社)』

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