遺伝情報はその担い手であるDNAから直接タンパク質へ移されるのではなく,一度メッセンジャーRNAに移され,それに従ってタンパク質のアミノ酸配列が決まり,形質発現がなされる.すなわち,次の図式で示され,これをセントラルドグマとよぶ(中心命題とも訳される).
この図式の矢印は遺伝情報の伝達方向をさしている.DNAからDNAへの矢印は,DNAがDNA自身を鋳型とする自己複製を意味する(DNAの複製).DNAからRNAへの矢印は,DNAを鋳型として相補的塩基配列をもつRNAが,RNAポリメラーゼによって合成される(転写)ことを意味する.転写のこの矢印は,RNA依存DNA合成酵素(逆転写酵素)の発見によって逆になる場合もあることが示された(点線).
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…J.D.ワトソンとF.H.C.クリックのDNA二重らせんモデル(1953)は,遺伝子の本体を明らかにすることにより,生物学再編成の突破口を開いた。1961年に始まった遺伝暗号の解読は数年でほぼ完了し(ニーレンバーグM.W.NirenbergとオチョアS.Ochoa),遺伝情報はDNA→RNA→タンパク質の方向にのみ流れるというセントラル・ドグマ(クリック,1958)が確認され,また遺伝子発現の調節はF.ジャコブとJ.モノのオペロン説で十分説明されるように見えた。一部の分子生物学者は,〈細菌でいえることはゾウでもいえる〉から,生命現象の大筋は解明されたという自信も示した。…
※「セントラルドグマ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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