改訂新版 世界大百科事典 「セーヘルス」の意味・わかりやすい解説
セーヘルス
Hercules Pietersz.Seghers
生没年:1589か90-1638ころ
オランダの風景画家,版画家。おそらくハールレムに生まれ,アムステルダムでフランドル出身の風景画家ファン・コニンクスローに学ぶ。1612年ハールレムの画家組合に加入ののちアムステルダムで活躍し,晩年はユトレヒトやハーグにも足跡を残しているが,その生涯はつまびらかでない。同時代の画家たちが身近なオランダの自然を写実的に描いたのとは対照的に,作品の多くはアルプスを思わせる険しい山岳風景を扱ったものである。この点,奇景に満ちた幻想的なパノラマ風景を好んでとり上げたマニエリストの伝統に連なるが,大地の微妙な生動を感じさせる異様なまでの実在感を備えており,すぐれて個性的である。彼はまた,種々の実験的な試みを通じてエッチングに新たな表現の可能性を追求してレンブラントへの道を開拓した。
執筆者:高橋 達史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報