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民間療法 みんかんりょうほう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

民間療法
みんかんりょうほう

医師の手によらず,あるいは医学界が重視しなかったため,主として一般民間人の間で,伝承あるいは改良を加えて行われている健康法や病気の治療法鍼灸術,あんま指圧などの手技療法,温灸,温熱法などの熱療法,各種の食事療法,可視線,赤外線,紫外線などの光線療法,絶食療法,刺激療法,各種波長の電磁波療法などがある。なお一部の医師は採用,実施しているが,日本の医学界としてはほとんど顧慮していないオステオパシーカイロプラクティックホメオパシーなどは,半医半民的療法といえる。

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デジタル大辞泉の解説

みんかん‐りょうほう〔‐レウハフ〕【民間療法】

民間に流布し、医師にかからないで行う経験的な療法。

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百科事典マイペディアの解説

民間療法【みんかんりょうほう】

医師によらず,経験・伝承による方法で行われる病気の治療法。民間薬指圧,温泉浴,瀉血(しゃけつ)などの各療法のほか,祈祷(きとう),まじないなどもある。広義には鍼(しんきゅう),あん摩など漢方的療法も含めたが,最近は伝統医学の名で別の扱いをされることが多くなってきた。
→関連項目迷信類似療法

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世界大百科事典 第2版の解説

みんかんりょうほう【民間療法】

医師の資格をもたない一般人が,もっぱら伝統的な知識にもとづいて行う治療。風邪のときの卵酒いぼとりなど,一般に家庭内で行われるものが多く,これらは素人療法,家庭医療などともいわれるが,広義には磁気や電子機器を用いた療法,断食療法など特殊な食事療法,またこれらを組み合わせたものなどをも含めたものをいう。また,日本では明治以後,西洋医学が主流となり,漢方医学は医療類似行為として,医療行政や医学教育から排除され,その結果,民間で細々と実施されるにすぎなくなったことから,鍼灸(しんきゆう)やあんま(按摩)など漢方医学的治療も民間療法とされてきた。

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大辞林 第三版の解説

みんかんりょうほう【民間療法】

一般の人が民間に伝承されてきた方法で行う病気の治療法。まじないや暗示、民間薬や食餌しよくじ療法など方法は多種多様。体質改善や健康維持も対象となる。 → 伝統医学

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

民間療法
みんかんりょうほう
folk medicine

さまざまな医療的活動のうち、社会的に公認された正統医学(一定の資格を与えられた専門家によって行われる)以外の医療活動のすべてを含むものといってよい。しかし、両者の内容に一般的で明確な境界線を引くことはむずかしい。公認された医学の代表は科学的医学あるいは生物医学とよばれる現代医学であるが、歴史的に長い経験のうえに築き上げられた中国医学(漢方)、インド医学(アーユルベーダ)などの「伝統医学」も、国によっては公認されている。カイロプラクティック(脊柱矯正療法)などの比較的に新しい療法もアメリカでは一定の公認の地位を与えられている。また、アフリカのいくつかの国では、呪術(じゅじゅつ)的治療を行う呪医が現代医学の病院で治療活動を行うことを公認している。そのため、社会的認知という側面から民間療法に一般的基準を設定することは非常にむずかしい。同様の理由で、治療者が社会的に公認されているか否かで基準を設定することも困難である。ある社会では民間療法とみなされる医療行為が、別の社会では公認のものとなりうるからである。そこで、正統医学の基準として出てくるのが、それが基づいている知識・理論とその適用における科学性を主張する立場である。アッカークネヒトAckerknechtがいわゆる「未開医学」の特徴を「根本的に呪術的・宗教的であり、合理的要素の利用はわずかである」といっているのは、この立場の主張でもある。この立場からすれば、現代医学を除くすべての医療は非正統的な民間療法ということになるが、一般的にはこの考え方がもっとも受け入れられていると思われる。わが国における「漢方の復権」が、漢方の科学的再評価を通じてしかなされえなかったのは、このことをよく示している。しかしこれとは逆に、医師の指示のなかにも、たとえば病後の入浴の可否などのように、科学的根拠よりはむしろ経験的根拠に基づくものが少なくないことにも留意すべきである。「伝統医学」が一貫した理論体系、経験に培われた治療体系、治療者養成制度を兼ね備え、重要な代替医療体系として認められている国もある。しかし、その理論体系は科学的検証を経たものではなく、むしろ形而上(けいじじょう)学的であり、治療法も科学的に妥当なものばかりではない。「伝統医学」はこうした点で科学的医学とも民間療法とも異なる面がある。[武井秀夫]

経験合理性と呪術性

民間療法を科学的裏づけをもたないものとみるにしても、それらの有効性がすべて否定されるわけではない。民間療法を構成するものとして、薬草、湿布、温・冷浴、マッサージ、副木法などの経験合理的な要素と、護符、祈祷(きとう)、悪魔払いなどの呪術的要素とを分けて考えることが多いが、長い経験に裏打ちされた、前者に分類されるさまざまな療法が、科学的説明はまだない場合でも、有効性をもちうることはよく知られており、一つの重要な歴史的文化的遺産としてその記録と有効性の科学的解明が期待されている。フォスターFosterはさまざまな民族医学の分析から、人格主義的医学体系――病気の原因を神、祖霊、悪霊、人間などのしわざ(神罰、祟(たた)り、憑依(ひょうい)、妖術(ようじゅつ)、邪術など)に求める体系――と、自然主義的医学体系――病気の原因を非人格的な要因(陰陽、元素、体液、冷熱など)の平衡の乱れに求める体系――という考え方を提案している。前者は民間療法の呪術的要素に、後者はその経験合理的要素に対応するといえる。科学的現代医学は自然主義的体系の一特殊型ということができる。
 民間療法はその呪術的要素のゆえに迷信に属するものとみなされることが少なくない。しかし、病気の原因が呪術に帰されるとき、アフリカの民族集団アザンデの例にみられるように、それを通じてなぜほかならぬその人が、ほかならぬそのときに病気になったのかということの原因が考えられている(それがすべてではない場合でも)ことに注意しておく必要がある。先天性疾患を別にすれば、一般に人が病気になるかどうかは宿主(しゅくしゅ)側の要因(性、年齢、体力、体質、栄養、生活習慣、社会的心理的ストレスの有無など)と病原的要因(病原微生物、発癌(はつがん)物質、毒物、放射線、その他の自然環境要因など)の間の相互作用から決まってくると考えられる。これらの要因は社会的文化的要因と自然的生物的要因とに分け直すこともできる。科学としての医学は自然的生物的要因、とくに病原的要因を研究の焦点として発達してきたが、それとの比較において、呪術的医学は宿主側の要因、とくに社会的文化的要因に焦点を置いて発達したものとみることができる。病気における社会的文化的要因の重要性は現代医学においても再認識されつつあるが、その意味では、科学的医学が体系としての呪術的医学に学ばねばならない点も少なからず出てくると思われる。[武井秀夫]

民間療法・健康法ブーム・新興宗教

民間療法は、正統医学によっては解決困難な病気と健康に関する社会的ニーズを反映するという一面もある。癌やほかの生活習慣病(成人病)などの病を恐れ、若さやよりよい健康を求める昨今の民間療法、健康法、自然食などのブームや、病気治しをその重要な要素とする新興宗教の隆盛はそうしたものとして理解できる。この点で、民間療法の研究は、単に歴史的文化的遺産の記録という以上の重要性をもつものである。
 民間療法の領域でも民間療法の専門家と称される人は存在するが、民間療法の最大の特徴の一つは、現代医学とは異なり、その知識が専門家だけに独占されるのではなく、各成員が比較的に均質な知識をもつ社会や、一つ一つの知識が個人的財産として他人には秘密に相続され、病人が出るとさまざまな形の交換を通じてそれらの知識が利用される社会などの違いはあれ、知識がなんらかの形で集団的に共有されている点にある。知識の独占がもたらす社会的弊害について考えるとき、民間療法的な知識のあり方は一つの有効な示唆を与えるものとなるかもしれない。[武井秀夫]

日本における習俗

近代になって西洋医学が採用されるようになるまでは、もっぱら漢方医学を加味した民間療法が全国的に行われていた。例として、近世の文献にみえた治療法の若干を紹介しておきたい。小山田(おやまだ)(高田)与清(ともきよ)の『松屋筆記(まつのやひっき)』(1818~45)に、中風の妙薬としてシュロの若葉を黒焼きにして用いればすぐ平癒するとある。若葉がなければ古葉でも結構とある。また同書に、およそ切り傷の妙薬は水油にしくはない。いかなる手負いでも水油をつければ即効する。温めて用いればなおよいとある。柳沢淇園(きえん)の著と伝えられている『雲萍雑志(うんぴょうざっし)』(1842)に、ソテツの葉を黒焼きにしてゴマの油に浸し、蓄えておいたものは、金創(きんそう)切り傷にはいかほどのことにても酒にて洗わずに癒(い)ゆること妙である。楠木正成(くすのきまさしげ)の家法だ、とある。自分の友人で人に切られた者が深さ四寸の傷を負ったが、この法ですぐよくなったとある。津村淙庵(そうあん)の『譚海(たんかい)』(1795)にも、眼疾にはヘチマの水を塗るとか、鳥目(とりめ)にはコイの塩辛(しおから)がよいとか記されている。
 これに類似した民間療法は、現代においても行われている。家庭内でよく行われているものに、風邪(かぜ)をひいたとき卵酒をつくるとか、寝る前に梅干しを黒焼きにして熱湯に入れて飲むなどがある。また生傷(なまきず)の手当てに袂(たもと)くそをつけるというのもよく聞かれたことである。やや奇抜な処置としては、福島県南相馬(みなみそうま)市小高(おだか)区をはじめ各地で、しゃっくりが止まらぬとき、茶碗(ちゃわん)に水を入れ、その上に箸(はし)を十字に渡して四隅から水を飲むと治るという。この方法が、遠く離れた沖縄本島の山原(やんばる)地方で、食べた魚の骨がのどにつかえたとき同様に行われているのはおもしろい。
 以上のような治療法は、熱したり、冷やしたり、刺激したりするいわば物理的療法ともいうべき方法で、ほかに古くから鍼(はり)、灸(きゅう)や湯治なども行われてきた。治療法のなかには、神仏に頼る信仰的療法もある。岩手県などでは歯痛のとき白山(はくさん)神社に祈願する。以前には麻幹(おがら)、カヤなど100本を供えたが、現在では既製の割箸(わりばし)にかえているという。また、いぼ地蔵、くさ地蔵(かさ地蔵)、おこり地蔵、はしか地蔵などとよばれるものがあり、それぞれ、いぼ、瘡(くさ)、おこり(マラリア)、麻疹(ましん)を病んだときに祈願する。また、合力祈願ともいうべきものもある。すなわち、村に重病人があるとき、村中の各戸ごとに1人ずつ出て大ぜいで神仏に祈願するもので、千垢離(せんごり)とか勢祈祷(せいぎとう)とかよばれる。これは、多人数の力をあわせると、それだけ効果があると信じたわけである。さらに、信仰を背景にした療法で全国各地にみられるものに、御神水を頂くというのがある。神社の境内などの特定の石のくぼみや古木の洞穴などにたまった水を、目など悪いところにつけたり、飲んだりすると治るというものである。
 次に、本式の治療に及ばないで、まじないによる呪術(じゅじゅつ)的療法もある。例をあげれば、目のものもらいなどに畳の上で櫛(くし)をこすってそれを目に当てる療法がある。呪文を唱える例もある。しびれの切れたとき「しびれしびれ京へ上れ」といったり、「橋を渡れ」と唱えたりする。さらに、まじないには病気にかからないための予防的なものもあった。クワの葉や実は中風の薬といわれ、平素からクワの木の湯飲みを使っておれば中風にならないというものや、乗り物に酔わないためには、梅干しや、サンショウの実をへそにつけておけばよいといったものが知られる。
 最後に、いわゆる草根木皮を使用する薬物療法がある。ごく広く用いられている薬草をあげると、ゲンノショウコ、ドクダミ、センブリ、ユキノシタなどがあり、民間薬として使用され、薬効が認められている。[大藤時彦]

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