日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベスブ石」の意味・わかりやすい解説
ベスブ石
べすぶせき
vesuvianite
idocrase
正方柱状ないし正方複錐(ふくすい)状の結晶をするほか、粒状ないし塊状の鉱物。塊状の場合、ざくろ石と肉眼的に区別しがたい。スカルン鉱物の一つとしてよく産し、灰礬(かいばん)ざくろ石、透輝石、珪灰(けいかい)石、透閃(とうせん)石、柱石などと共生する。また、超塩基性岩中に脈状ないし塊状で産したり、その中に含まれるロジン岩を構成する鉱物としてもよくみられる。一般にアルミニウムやマグネシウムに富むものは淡色で、鉄に富むものは濃色となる。カリフォルニアひすいとよばれるものは、ベスブ石の微細結晶が緻密(ちみつ)に集合した緑色の塊である。日本のおもな産地は埼玉県秩父(ちちぶ)鉱山、大分県木浦鉱山などである。英名の一つvesuvianiteは、この鉱物がイタリアのベスビアス火山の火山弾塊中に発見されたことにちなみ、もう一つの英名のidocraseはギリシア語の「形態と混じる」ということばからきていて、ベスブ石が他の鉱物の結晶と形が混じっているようにみえるところから命名された。
[松原 聰]