改訂新版 世界大百科事典 「タビラコ」の意味・わかりやすい解説
タビラコ
Lapsana apogonoides Maxim.
稲作の間隙(かんげき)をぬい,冬季の水の落ちた田に生えるキク科の小型の二年草。本州~九州,朝鮮,中国に分布する。コオニタビラコとも呼び,春の七草のホトケノザは本種であるという人もいる。羽状に分裂した葉が,田の面にロゼットをなして生育するようすから〈田平子〉とよばれる。中国名の稲槎菜は,稲の刈り跡に生える草を意味する。切ると白い乳液が出る。4~5月ころ,10cmほどの花茎が斜上し,径7mmほどの小さな黄色の頭花をまばらにつける。頭花は舌状花のみからなり,朝開き夕方閉じる。結実期の頭花は楕円形で下を向く。瘦果(そうか)には冠毛がなく,先端に2本の短いかぎ状の突起がある。若菜をゆでて食用とする。なお,タビラコがムラサキ科のキュウリグサを指すことがある。
ヤブタビラコ属Lapsanaは世界の温帯に約10種あり,日本にはほかにヤブタビラコL.humilis Makinoがある。日本全土および中国の平地のやぶ陰に普通にみられ,タビラコによく似るが,果時の頭花が卵球形で,瘦果の先端の突起がない点が異なる。
執筆者:森田 竜義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報