タルチュフ(読み)たるちゅふ(英語表記)Le Tartuffe ou L'Imposteur

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タルチュフ」の意味・わかりやすい解説

タルチュフ
たるちゅふ
Le Tartuffe ou L'Imposteur

フランスの劇作家モリエール戯曲。五幕韻文喜劇。副題は「ぺてん師」、1664年初演。パリの町人オルゴンはえたいの知れぬにせ信者タルチュフにのぼせあがり、彼を家に招じ入れ信仰の鑑(かがみ)として手厚くもてなし、ほかに恋人のいる娘を彼と結婚させようとする。しかしタルチュフは同時にオルゴンの若い後妻エルミールをくどくという鉄面皮ぶりを発揮する。エルミールのたくらみによってにせ信者の正体は暴露される。と、彼は居直って一家財産をのっとり、かつオルゴンの託した秘密文書を盾にとりオルゴンを告発する。しかし国王の内命を受けていた警吏はあべこべにタルチュフを逮捕し、オルゴン一家は危ういところを救われる。信仰の問題を取り上げたこの作品は、当時の社会に根強い力をもつ教会側の忌諱(きき)に触れ、上演禁止処分をも被っている。

[井村順一]

『鈴木力衛訳『タルチュフ』(岩波文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タルチュフ」の意味・わかりやすい解説

タルチュフ
Le Tartuffe

フランスの劇作家モリエールの韻文喜劇。5幕。 1664年ベルサイユ宮殿の祭り「魔法島の歓楽」の第4夜にモリエールの劇団によって3幕だけが初演されたが,宗教界からの圧力により一般公開は 67年まで許可されず,完全な上演は 69年。大成功を収め,以後今日までコメディー・フランセーズのレパートリー中最も多く上演されている。にせ宗教家タルチュフの偽善家ぶりと彼にだまされて財産を奪われたうえ,国事犯として訴えられる金持を描き,痛烈な社会風刺を盛った古典主義性格喜劇の傑作

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