フランスの数学者。南フランスのニームに生まれ,早くから数学の才能をあらわす。1861年,エコール・ポリテクニク,エコール・ノルマル・シュペリウールに首席で入学を許されたが,教育への固い信念から,当時圧倒的人気のあった前者よりも後者を選んで話題となった。66年直交曲面族の理論で学位を得,リセの教官となる。72年エコール・ノルマル・シュペリウールの講師,81年ソルボンヌ大学教授,89年同大学理学部長。この間,解析学の研究において顕著な業績を残し,以後解析学と幾何学との融合に力を尽した。彼が創案した動標構の方法は20世紀の幾何学にも大きな影響を与え,その寄与は計り知れない。約10年の歳月をかけて書かれた不朽の名著《曲面論》には彼の業績とその先駆者たちの仕事が凝集されており,なかでも曲面の変形,球面表示,定曲率曲面,直交曲面族,無限小変形などについての諸問題が偏微分方程式を軸として論ぜられ,種々の関連性がみごとにとらえられている。
執筆者:森本 明彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
フランスの数学者。ニームに生まれ、パリのエコール・ノルマル・シュペリュール(高等師範学校)を卒業後、同校助教授(1872~1873)、ソルボンヌ大学(パリ大学)の力学助教授(1873~1880)、同じく高等幾何学教授(1880~1889)、理学部長(1889~1890)を務め、1884年からは学士院終身会員となり、1900年に同幹事長を務めた。
彼の研究は主として幾何学に関するもので、直交曲面についての論文(1866)、学位論文の二階偏微分方程式についての論文(1870)がある。また「偏微分方程式の特異解」の論文は1876年に学士院賞を受けた。主著は4巻からなる『曲面の一般理論および微積分の幾何学的応用』(1878~1896)で、彼以前の多くの研究を含み、後世に益するところが多い。
[小松醇郎 2018年9月19日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…このようにして,微積分学を用いて曲線や曲面の性質を研究する微分幾何学が始まったが,19世紀の初めに,ガウスが曲面論の基礎を確立し,曲面上の幾何学を展開するに及んで,数学の一分科としての微分幾何学が成立した。この後,19世紀にはボネO.Bonnet(1819‐92),ベルトラミE.Beltrami(1835‐1900),M.S.リー,J.G.ダルブーらによって,ユークリッド空間における曲線や曲面についての多くの興味ある結果が見いだされた。20世紀に入ると,クラインの思想の影響を受けて,射影空間の曲線や曲面の射影変換で不変な性質を微分学を用いて研究する射影微分幾何学がフビニG.Fubiniらによって研究され,その他のいろいろな空間に対しても同様の微分幾何学がブラシュケW.Blaschke(1885‐1962)らによって研究された。…
※「ダルブー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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