チェレンコフ(読み)ちぇれんこふ(英語表記)Павел Алексеевич Черенков/Pavel Alekseevich Cherenkov

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チェレンコフ」の意味・わかりやすい解説

チェレンコフ
ちぇれんこふ
Павел Алексеевич Черенков/Pavel Alekseevich Cherenkov
(1904―1990)

ソ連物理学者ボロネジに生まれ、1928年ボロネジ大学を卒業。1930年よりレーベデフ物理学研究所の研究員となった。物理学者バビロフSergei Ivanovich Vavilov(1891―1951)の下で、液体中にγ(ガンマ)線を照射すると液体が発光する現象の実験を始めた。当時、液体や固体に高エネルギーの光を照射するとルミネセンスをおこし発光することが知られていた。このころ、弱い光を測定する方法がなく、チェレンコフ暗闇(くらやみ)に慣れた目によって測光し、また液体中でのルミネセンスはそこに混合物が存在することによりおこるので、水を二度蒸留して混合物を少なくし実験した。ところがそれでも発光が見られ、ルミネセンスではない発光がおこっていることが明らかとなった。この発光は、γ線のコンプトン効果によってつくられた超光速電子による電磁的なマッハ波によることがタムとI・M・フランクによって明らかにされ(1937)、「チェレンコフ効果」とよばれるようになった。

 この効果を利用したチェレンコフ計数管は高エネルギー物理実験の必需品となった。1958年、タム、フランクとともにチェレンコフ効果の発見解釈によりノーベル物理学賞受賞した。

[佐藤 忠]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チェレンコフ」の意味・わかりやすい解説

チェレンコフ
Cherenkov, Pavel Alekseevich

[生]1904.7.28. ボロネジ
[没]1990.1.6.
ソ連の物理学者。ボロネジ大学で学び,1930年よりソ連科学アカデミーのレーベデフ物理学研究所で研究,同研究所の光-中間子反応研究室長 (1959) 。 34年チェレンコフ放射を発見した。この現象はそのまま高エネルギー荷電粒子線の検出に利用され (→チェレンコフ計数器 ) ,高エネルギー物理学発展に貢献した。 I.タム,I.フランクとともに 58年ノーベル物理学賞を受賞。

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