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原子核のγ崩壊の際に放出される放射線。波長の非常に短い電磁波で,波長の長いほうの限界ははっきり定まっていないが,0.1Å程度まで含まれる場合が多い。その光子のエネルギーは線スペクトルを示し,典型的には数十keVから数MeVに及ぶさまざまな値をもつ。α線,β線に比べ強い透過力をもつのが特徴であるが,物質中の電子と光電効果やコンプトン効果の相互作用,あるいは電子-陽子対生成によって指数関数的に強度を弱める。検出には主としてヨウ化ナトリウム・シンチレーションカウンター,ゲルマニウム半導体検出器などが用いられる。放射性崩壊に続くγ崩壊や原子核反応でできる励起状態のγ崩壊からのγ線を詳しく調べるγ線スペクトロスコピーによって,原子核構造などが明らかにされつつあり,またγ線を応用するものとして,メスバウアー効果を利用した物性などの研究も行われている。このほか,γ線は癌の治療などの医療目的,金属中の探傷などの工業用にも広く利用されている。
→放射線
執筆者:山崎 敏光
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
原子核のエネルギー準位間の遷移により放出・吸収される光子(電磁波)であり,一般に高いエネルギーをもっているが,235U 原子核の第一励起準位から基底準位への遷移に伴うγ線は数十 eV のような低いエネルギーをもっている.A.H. Becquerel(ベクレル)によるウランの放射能の発見(1896年)やCurie(キュリー)夫妻によるラジウムおよびポロニウムの発見(1898年)以来,α線,β線とともに放射性元素の出す放射線としてよく知られている.高エネルギーγ線の線源は,放射性同位元素として入手がかなり容易になったので,広く理工学研究用の照射線源として用いられ,医療用としてはがんの治療や診断など,工業用では非破壊検査法の一種として鋳物,溶接部の内部欠陥の探知など,その応用は急速に広がりつつある.さらにメスバウアー効果を利用した物性研究の方面にもその用途が拡大されてきた.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…また,宇宙空間での宇宙線のもつエネルギー密度は1eV/cm3程度である。二次宇宙線の成分は,π中間子,K中間子など,およびこれらが崩壊して転化するμ粒子,電子,γ線,中性微子などである。なお,少量ではあるが,宇宙から飛来する電子,陽電子,γ線,中性微子,反陽子などもあり,高エネルギーのものは宇宙線として扱われている。…
…
【原子核の崩壊】
原子核の発見のきっかけとなったのは,その崩壊の際に放出される種々の放射線である。α線,β線,γ線が知られているが,その正体はα線がヘリウムの原子核42He,β線は電子,γ線は波長の短い電磁波である。α線放射による崩壊(α崩壊)は,原子核(A,Z)が(A,Z)→(A-4,Z-2)+42Heという過程に対して不安定である場合,すなわちB(A,Z)<B(A-4,Z-2)+B(4,2)の場合に起きる。…
…次いでE.ラザフォードは,ウランから放出される放射線のなかに,正の電荷と負の電荷をもつ放射線があることに気がつき,それぞれ,α線とβ線と名づけた。さらに,電荷をまったくもたない放射線もあることが発見され,γ線と命名された。β線が電子の流れであることは1900年にベクレルによって明らかにされた。…
…これを電磁波という。電磁波はその波長によって,一般に波長がmm程度以上のものを電波,それより短く1μm程度までを赤外線,0.7μmから0.3μm程度までを可視光,さらに短く数nmまでを紫外線,若干重複して10nmから1pmの範囲をX線,10pmより波長の短い電磁波をγ線と呼んでいる。重複している部分は,電磁波を発生するメカニズムに応じて呼称を変えているのがふつうで,また電波を電磁波と同義に用いることも多い。…
※「ガンマ線」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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