光を測定することであるが,専門的には心理物理量としての光を測定することをいう。英語では,したがってphotometryという特別の単語を使っている。つまり,人間の目にとってどれだけ効果のある光かを測定することであり,当然ながら可視域の光だけが測定の対象になる。赤外線や紫外線に対しての測光というものは本来ありえないのである。この面の照度は何ルクスあるとか,テレビ面画の輝度は何ニトであるとか,あるいはこの光源の光度は何カンデラあるとかの測定はすべて測光である。
人間の目にとっての光の効果を問題にするのであるから,目の光に対する特性,とりわけ分光感度がわかっていなければ測光はできない。その代表的なものが国際照明委員会(CIE)の比視感度関数V(λ)である。このV(λ)を決めるに際しては,ある一定の強さの白色参照光とある波長の単色光とを比べてみて,それらが互いに等価になる単色光の強さを求める。これをいろいろな波長について実行すれば,参照光と同じ視感覚効果をもたらすための各波長の光の効率が求まる。そのピーク値を1に正規化すれば比視感度となる。このとき,どういう感覚効果に着目して上記の実験をするかによって,得られる分光感度は多少異なってくるが,V(λ)は一応,明るさという効果に対する比視感度であると解釈されている。厳密にいえばこの解釈は必ずしも正しくない面もあり,V(λ)はいまだに研究の対象であるが,ここでは明るさの比視感度ということにしておく。
このようにして光の効率がわかれば,目に入ってくる光の分光エネルギー分布をLe,λとすれば,光の目にもたらす効果の全体量Lは,で求まる。Kmは最大視感度と呼ばれる定数で,683lm/Wと定められている。したがって,今ある面が555nmの単色光で0.1W/m2・srの放射輝度をもっているとするなら,単色光なので積分する必要がなく,V(555)=1であるから,L=683×0.1×1lm/m2・sr,つまり68.3ニトの輝度をその面はもつということになる。同じワット数でも他の波長ならこれより小さい測光量になる。つまり暗いのである。上の式でLe,λをW/m2の放射照度で表現するとLは照度になる。このように放射量と測光量は比視感度V(λ)によって結びつけられ,放射束には光束が,放射強度には光度が,放射照度には照度が,そして放射輝度には輝度が対応する。いずれの場合も前者は放射量,つまり純粋の物理量,後者は測光量,つまり人間の目の感度が考慮された心理物理量である。
比視感度には明るい視環境で意味のあるものと暗い所のものと両方あるが,上記のV(λ)は明所視のものである。したがって,暗い所での測光量はV(λ)をV′(λ)で置き換え,KmもKm′(1700暗所視lm/W)で置き換えなければならない。しかし暗所視測光は生活上はほとんど意味がなく,式の上で定義されているにとどまっている。むしろ重要なのは明け方や夕暮れどきの視感覚を代表する薄明視の測光であるが,その明るさレベル近辺では目の分光感度が環境の明るさの変化に対応して敏感に変わる。そのため比視感度関数が標準化されないまま今日に至っており,したがって測光もできないでいる。
→標準比視感度
測光を行う装置を測光器という。もしそれが光度を測るものなら光度計,照度なら照度計,輝度なら輝度計である。これら測光器の使用に際しては,何を測ろうとするかによって異なった使い方となるので注意が必要である。例えば照度計なら,面に落ちてくる光束の密度を測るものであるから,受光器をその面の上に置き,しかも受光面を光のくるほうに向けなければならない。これに対して輝度計の場合は面からこちらに向けてくる光束の量を測定するものであるから,受光器は面に対して置き,受光面をその面に向けて測光しなければならない。また測定面に照準を合わせる必要があり,このため輝度計には受光面の前部にレンズがついている。照度計の場合はそこに落ちてくる光束をそのまま測定すればよいので,受光面が表面にむきでたような設計になっている。実際にはその外側に半球状の拡散板がかぶせてあり,外からの光をうまく集めて受光面に与えるようなくふうが施されている。
測光器の分光感度は比視感度V(λ)と同じでなければならない。この性質を受光器にもたせたのがフィルター式測光器である。フィルターの透過率と受光素子の分光感度の積がちょうどV(λ)になるように作られている。したがって光を受けたときの受光器の出力がそのまま測光量となる。もう一つの方式は分光式のもので,入射してくる光の分光エネルギー分布Le,λを測定し,そのあと前述した式で計算して測光量を算出するものである。計算部分は小型化されたが,Le,λを測定するにはやはり干渉フィルター群や回折格子などを使わねばならないので,ある程度以上の小型化はむずかしい。このため携帯用測光器のほとんどはフィルター式である。
以上の説明で明らかなように測光の土台は比視感度V(λ)である。したがって,もしこれが変更されるようなことになるとその影響はきわめて大きく,測光器はすべて作り直さなければならない。現行のV(λ)がほんとうに忠実に人間の明るさ感覚の分光感度を代表しているのかという疑問もあり,もしそうでないなら今までのものを修正するか新しい標準を作るべきだとの声も絶えない。最近の研究では,明るさの分光感度はV(λ)とは相当異なるという結果が明らかになっており,したがって将来は現行の測光の土台が修正される可能性がある。
執筆者:池田 光男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
光の量を測定することをいう。光の量として、光度、光束、照度、輝度、光束発散度があり、これらは測光量と称される。測光量は、人の明暗の知覚と波長の関係を調べて標準化した標準比視感度によって評価されるため、測光量を測定する受光器の波長に対する応答特性は、標準比視感度にきわめて近似していなければならない。また、目で感じる明るさは瞬間ごとの光の量に関係するので、測光量は単位時間当りの量をもとにする。肉眼により測光することを視感測光、光電池や光電管等の物理受光器で行うことを物理測光というが、現在では物理測光が主である。
光度、光束の測定では、量の値づけのために高品質の白熱タングステン電球でできた標準電球が用いられる。たとえば、ある光源の光束を測定する場合、球形光束計を用いて光束標準電球の光束値と比較して値づけられる。また、光度の場合は、光度標準電球の光度値により値づけられる。照度、輝度、光束発散度は、それぞれ照度計、輝度計、光束発散度計により測定される。これらの計器が正しい値を示すように値づける、あるいは確認することを校正というが、これには光度既知の光度標準電球(分布温度2856K)が原則的に使用される。
[高橋貞雄]
『照明学会編『光の計測マニュアル』(1990・日本理工出版会)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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