日本大百科全書(ニッポニカ) 「チドリノキ」の意味・わかりやすい解説
チドリノキ
ちどりのき / 千鳥木
[学] Acer carpinifolium Sieb. et Zucc.
カエデ科(APG分類:ムクロジ科)の落葉小高木。山の柴(しば)となるカエデの意味からヤマシバカエデともいう。葉は対生し、長楕円(ちょうだえん)形で長さ8~15センチメートル、幅3~7センチメートル、多数の側脈が平行に走り、縁(へり)に重鋸歯(じゅうきょし)がある。葉柄は1~1.5センチメートル。冬芽の鱗片(りんぺん)は8~12対。雌雄異株。4月末から5月に総状花序をつくり、数個から十数個の小さな淡黄緑色花を開く。一般に花弁、萼片(がくへん)ともに4枚、雄しべは6本。果実は2翼があり、秋に熟す。温帯の山地、とくに沢沿いに多く生え、本州から九州に分布する。葉形はカバノキ科のサワシバやクマシデに似るが、これらは互生なので区別できる。日本固有の珍しいカエデで、近縁種はみられない。名は、翼のある果実を千鳥に見立てたもの。
[緒方 健 2020年9月17日]