国際地球観測年(読み)こくさいちきゅうかんそくねん(英語表記)International Geophysical Year

精選版 日本国語大辞典 「国際地球観測年」の意味・読み・例文・類語

こくさい‐ちきゅうかんそくねん ‥チキウクヮンソクネン【国際地球観測年】

〘名〙 (International Geophysical Year の訳語) 国際学術連合会議(ICSU)の企画によって、六四か国が協力し全世界的規模で地球物理学上の観測事業を行なった一九五七年七月から五八年一二月までをいう。電離層高層気象宇宙線・太陽現象地磁気・極光・経緯度(けいいど)などの観測を行なった。日本は昭和基地を設営して南極観測事業を開始。IGY。

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デジタル大辞泉 「国際地球観測年」の意味・読み・例文・類語

こくさい‐ちきゅうかんそくねん〔‐チキウクワンソクネン〕【国際地球観測年】

International Geophysical Year気象地磁気・極光と夜光電離層太陽活動宇宙線・経緯度などの地球物理現象について、国際協力により全地球的観測が行われた年。国際極年から発展したもので、1957~58年に実施IGY

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「国際地球観測年」の意味・わかりやすい解説

国際地球観測年
こくさいちきゅうかんそくねん
International Geophysical Year

1957年7月1日から1958年12月31日までの1年半にわたって行われた国際共同の地球物理現象観測事業(略称IGY)。もともと、極地を中心とする気象、地磁気などの共同観測を目的とする国際極年(International Polar Year、略称IPY)という国際共同観測が、第1回は1882~1883年、第2回は1932~1933年と50年ごとに行われており、第3回は1982~1983年が予定されていたが、第二次世界大戦後の学問の急速な発展を考えて、25年目に繰り上げようということになった。ところが計画が進むうちに、極地ばかりでなく全地球を対象としよう、また観測項目もなるべく多くの現象を対象にしようと、どんどん規模が大きくなっていった。このために、名称も国際地球観測年と改め実施されることになった。全体の計画は国際学術連合会議(ICSU。現、国際科学会議)が統括し、それに60か国以上が参加し、極光(オーロラ)、気象、海洋氷河、地震、重力、地磁気、宇宙線など、地球物理のほぼすべての分野にわたる観測が実施された。

 この頃はまだ東西冷戦の真っただ中であり、国際的な共同研究などは非常に困難な時代であったが、主要国がほぼすべて参加することになったIGYのためにさまざまな共同観測が実現した意義は非常に大きかった。またこの期間内に、ソ連が史上初の人工衛星スプートニクを打ちあげ、アメリカも翌年にはエクスプローラを人工衛星軌道に乗せることに成功して、宇宙空間の観測が開始されたことは特筆すべき成果である。さらに、南極大陸における各国の観測事業も国際地球観測年が契機となったものが多く、日本も1957年(昭和32)から昭和基地を設けて南極観測事業を開始した。昭和基地での観測はそれ以来今日までずっと続けられ、南極上空のオゾンホールの発見など、多くの科学的成果をあげている。

 このIGYの成功により、その後も多くの国際共同観測事業が実施されるようになった。固体地球関係では、1960年代に国際地球内部開発計画(International Upper Mantle Project、略称UMP)、1970年代に国際地球ダイナミクス計画(International Geodynamics Project、略称GDP)、1980年代に国際リソスフェア探査開発計画(International Lithosphere Project、略称ILP)などが実施されている。

[河野 長]

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百科事典マイペディア 「国際地球観測年」の意味・わかりやすい解説

国際地球観測年【こくさいちきゅうかんそくねん】

1957年7月―1958年12月に世界64ヵ国により行われた全地球的地球物理現象の共同観測事業。International Geophysical Yearの訳。IGYと略称。観測は気象,地磁気,夜光とオーロラ,電離層,太陽活動,宇宙線,緯度経度,氷河,海洋,ロケットと人工衛星,地震,重力,放射能の13項にわたり,米・ソの人工衛星の打上げ,バンアレン帯の発見,南極共同観測などがあった。1882年―1883年に北極を中心として観測した第1回国際極年(12ヵ国参加),1932年―1933年の第2回国際極年(26ヵ国参加)に次ぐ第3回が変更拡大されたもの。
→関連項目地球物理学南極観測南極条約マクマード基地ミールヌイ基地

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改訂新版 世界大百科事典 「国際地球観測年」の意味・わかりやすい解説

国際地球観測年 (こくさいちきゅうかんそくねん)
International Geophysical Year

略称IGY。64ヵ国が参加して地球物理現象の共同観測を実施した,1957年7月から58年12月までの期間のこと。観測項目は,気象,地磁気,夜光およびオーロラ,電離層,太陽活動,宇宙線,緯度および経度,氷河,海洋,ロケットおよび人工衛星による諸観測,地震,重力,放射能など多岐にわたり,バン・アレン帯の発見,海底地殻熱流量の測定,海洋における深層流の測定など多大の成果をおさめた。日本も日本学術会議を中心に,南極観測をふくむほとんどすべての項目に参加した。このような国際的共同観測は,1882-83年の第1回国際極年,1932-33年の第2回国際極年につづいて行われたもので,その意義が大きいことから,その後ひきつづいて行われた地球物理学諸分野での各種国際共同観測事業の出発点となった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国際地球観測年」の意味・わかりやすい解説

国際地球観測年
こくさいちきゅうかんそくねん
International Geophysical Year; IGY

普通,1957年7月1日から 58年 12月 31日までの 18ヵ月間をさし,その期間中に行われた,地球物理学現象についての国際協同観測事業をいう。国際学術連合会議により組織された。従来,地球の両極地方の研究のため行われてきた国際極年と称する協同観測事業の観測対象を全地球およびその周辺に拡大したもの。地震,重力,氷河,気象,海洋,地磁気,オーロラ,大気光,電離層,宇宙線,放射能,太陽活動などがその対象。ロケット,人工衛星が手段として,また対象として扱われ,南極観測が大規模に行われたのがその特徴。また,太陽活動は,極大の時期にあたっていた。

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世界大百科事典(旧版)内の国際地球観測年の言及

【宇宙開発】より

… 宇宙開発は,本来の意味からすると人間の宇宙空間および天体の利用であるが,これまでの経過をふりかえると,そのための技術の開発,すなわち人工衛星とロケットの開発と解釈される傾向があり,一般にはとくに両者を区別することなく,人間の宇宙への進出の活動全体を宇宙開発と解釈しているようである。宇宙飛行人工衛星ロケット
【宇宙への進出】
 宇宙開発が大きな課題として認識されるようになったのは,1957年に始まった国際地球観測年を契機としてであり,ここにおいて全世界的な事業として宇宙空間の観測を主とするこの分野の研究が取り上げられた。そして具体的に人類の宇宙への進出の第一歩となったのは,この期間の57年10月4日にソ連(現ロシア)が打ち上げた人類初の人工衛星スプートニク1号であり,初めて人工衛星による地球の周辺の空間の観測が行われた。…

【南極】より

…氷床の平均氷厚は約2450mで,平均標高は2300m,内陸では4000m以上に達する所もある。南極大陸の地形や地質に関する知識は1957‐58年の国際地球観測年を契機として急増しつつある。氷床の形態については,地上,航空機,人工衛星からの調査でその様相が明らかになりつつあるが,内陸部では未知の部分も多い。…

※「国際地球観測年」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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