相撲社会独特の手料理の名称。力士の食生活は,朝げいこのために朝食を抜き,昼夜の2食でまかなわれるが,その1食は必ずといっていいほどちゃんこなべを囲む。暑中も寒中もこの食生活の日課は変わらない。ちゃんこ料理は力士たちの体格を維持するカロリーの高い栄養源で,ひと口にいってちり,水炊き,寄せなべ風のものである。〈ちゃんこ〉の語源は2説あり,九州長崎を巡業中の一行が,じょうぶな中華なべを入手して土なべに代わって使用し,方言でいう中国風の発音で呼んだという。一説には幕下の老齢力士が炊出しの監督をしていたが,年配の者や父親を東京下町の方言で〈ちゃん〉というところから呼んだものともいう。いずれにしても明治時代に入ってからの名称である。相撲部屋でちゃんこ料理を交代でする下位力士を〈ちゃんこ当番〉,専任の力士は〈ちゃんこ長〉という。本来〈なべ〉をさす〈ちゃんこ〉だが,近年相撲部屋の食事はすべて〈ちゃんこ〉というようになってきた。
相撲部屋のちゃんこ料理は,ふつう鶏の〈ソップ炊き〉が多いが,材料は鶏肉ともつ,野菜は白菜,キャベツ,ジャガイモ,大根,ニンジンなどを用意し,深なべに鶏のがら骨と水を入れ濃いスープを作り,これにしょうゆ,砂糖を加えて味つけする。その中に材料を全部入れて煮ながら食べる。水炊きの場合は,ダイダイかユズの汁にしょうゆを入れてポンスをつくり,薬味のネギを刻み,これにつけて食べる。また季節に応じて魚を使い,ちりなべと同様に煮たて,ポンスにつけて食べる。
執筆者:池田 雅雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
相撲(すもう)社会で行われる独特の手料理。ちゃんこ鍋(なべ)ともいう。相撲社会では、年寄名を冠称する各部屋に力士が所属し、そこで弟子を養成するが、その宿舎で給される食事をちゃんこ料理といい、多くは昼時(力士は朝食抜き)に給される。名称の由来は、料理番のおやじを「ちゃん」とよんだためとか、長崎巡業中に中国伝来の鏟鍋(チャンクオ)料理なるものを知り、その手法を取り入れたためとかいう。鏟鍋は、板金製の鍋であるという。
材料は、魚貝類、骨付きの鶏肉、豆腐、野菜類などを用い、獣肉は「四つ足」とよばれることから古くは土俵での縁起を担いで用いられなかったが、いまでは自由に取り入れ、ハム、ソーセージの類まで加えたものもある。いずれも材料は大切りにし、野菜によっては手でねじ切って用いる。野菜は、白菜、ダイコン、ニンジン、キャベツ、ジャガイモなど幅広く、魚肉は切り身あるいはつみ入れにしても用いる。大鍋で水煮してポンスしょうゆで食べるもの、鳥鍋風、寄せ鍋風、ゴボウ・油揚げなどを加えたものなど、とくに決まった料理法はないが、全体に大まかな作り方で多量に調理でき、用いる器物も大ぶりで、ことさらな技巧も用いないだけに材料の持ち味が生かされ、栄養豊富でカロリーも高い点が特徴といえよう。ちゃんこ当番は下位力士や新弟子が交代で担当する。本来、力士や弟子たちの日常食であったが、最近では、元力士の経営する、ちゃんこ料理専門店も多い。
[多田鉄之助]
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