日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツリウム」の意味・わかりやすい解説
ツリウム
つりうむ
thulium
周期表13族に属し、ランタノイド元素で、希土類元素の一つ。1879年スウェーデンのクレーベPer Theodor Cleve(1840―1905)が当時エルビウムの酸化物とされていたエルビアから新元素として分離し、スカンジナビアの古名である極北の地を意味するThuleにちなんで命名した。ユークセン石、ガドリン石などに含まれるが、希土類元素のうちでその量がもっとも少ない。ほかの希土類元素とともに鉱物中から取り出し、イオン交換法によって分離する。無水塩化物を真空またはアルゴン気流中で液状アルカリ金属で還元すると、銀白色の金属が得られる。空気中では室温で表面が酸化され、加熱すると酸化ツリウム(Ⅲ)となる。水に徐々に溶けるが、熱水、酸に水素を発して溶ける。普通は酸化数Ⅲの化合物をつくる。3価の化合物の結晶および水溶液は淡い緑色、常磁性で、ごくまれに二価化合物ができる。
[守永健一・中原勝儼]