翻訳|erbium
周期表3族のランタノイドに属し、希土類元素の一つ。天然には単体として産出しない。スウェーデンのストックホルム近郊のイッテルビーYtterbyでみつかった鉱石から、新元素の酸化物が取り出され、イッテルビアと命名された。しかしこれは1843年さらに三つの元素に分けられ、一つはイットリウム、ほかの二つは産地にちなんでテルビウム、エルビウムと名づけられた。さらに1879年にエルビウムからツリウムとホルミウムが分離され、現在のエルビウムが確立された。ほかの希土類元素と同じように、ガドリン石、ゼノタイム、フェルグソン石などの鉱物から得られる。灰色の金属であるが、純粋な金属は単離しにくい。常磁性。空気中室温で表面が酸化され、高温では酸化エルビウムEr2O3を生成する。水では徐々に、酸では速やかに反応して水素を発生する。化合物は普通3価で、固体およびその水溶液は赤色系統が多い。
[守永健一・中原勝儼]
Er.原子番号68の元素.電子配置[Kr]4f 126s2の周期表3族ランタノイド元素.希土類元素イットリウム族の一つ.元素名はガドリン石の最初の発見地スウェーデンのytterbyにちなんで命名された.1843年スウェーデンのC.G. Mosanderがイットリウム試料中に発見した.もともとMosanderは,現在テルビウムと命名された元素をエルビウムとしていた.原子量167.259(3).質量数162(0.139(5)%),164(1.601(3)%),166(33.503(36)%),167(22.869(9)%),168(26.978(18)%),170(14.910(36)%)の6種の安定同位体と,質量数143~177の放射性同位体が知られている.地殻中の存在度2.2 ppm.ガドリン石,フェルグソン石,ゼノタイムなどに存在する.分離は困難で,溶媒抽出,錯体形成,イオン交換クロマトグラフィーの組合せで行われる.純金属はErF3のカルシウム金属による還元で得られる.融点1529 ℃,沸点2863 ℃.第一イオン化エネルギー6.108 eV.密度9.066 g cm-3.酸化数3.Er3+ の電子配置は4f11でいちじるしい常磁性を示す.化学的性質は一般の希土類元素と同じく,シュウ酸塩,リン酸塩,水酸化物,フッ化物,炭酸塩などは水に難溶.結晶および水溶液は赤色を示す.Er2O3は赤色ガラス用添加剤.Er:YAGレーザーは赤外線高出力レーザーで,歯科治療用などに用いられる.Erドープ光ファイバー(EDFA)は光増幅器に用いられる.[CAS 7440-52-0]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
周期表第ⅢA族に属する希土類元素のうちのランタノイドの一つ。1843年スウェーデンのモサンデルCarl Gustav Mosanderは,それまで元素とされていたイットリウムが三つの元素に分けられることを見いだし,一つはそのままイットリウムとし,他はイットリウムの名称のもととなった地名イッテルビーYtterbyにちなんでテルビウムとエルビウムとした。しかし79年スウェーデンのクレーベPer Theodor Cleveは,エルビウムがさらに三つの元素に分けられることを見いだし,一つはエルビウム,他の二つはホルミウムとツリウムと名づけ,現在のエルビウムが確立された。主要鉱石はガドリン石,ゼノタイム,フェルグソン石など。単体は灰色の金属であり,無水塩化物ErCl3を1000℃でリチウム蒸気によって還元すると得られる。化合物は一般に赤色,常磁性。
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…1843年スウェーデンのモサンデルC.G.Mosanderが,それまでイットリウム酸化物とされていたイットリアから三つの元素を分離した。そしてイットリウムの名称のもととなった産地イッテルビーYtterbyから,それを三つに分け,イットリウムyttrium,テルビウムterbium,エルビウムerbiumと命名した。ランタノイド元素のうち最も希産の元素の一つ。…
※「エルビウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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