日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲラニオール」の意味・わかりやすい解説
ゲラニオール
げらにおーる
geraniol
ローズ香を有する代表的非環式モノテルペンアルコール。パロマローザ油、ゼラニウム油、シトロネラ油など多くの植物精油の主成分であり、ゼラニウム油から得られるアルコールとしてゲラニオールと命名された。ゲラニオールの立体構造はtrans(E)-型である。その立体異性体であるネロールの立体構造はcis(Z)-型であり、天然に存在するが、香調が異なり使用量は少ない。
天然品のゲラニオールはシトロネラ油を10~20段の理論段数をもつ分留塔で減圧蒸留し、シトロネラール留分とゲラニオール留分とに分ける。ゲラニオール留分をアルカリ処理してから再蒸留して製品とする。現在では合成品のゲラニオールが主流であり、次の3種のプロセスによって工業的に製造されている。
(1)アセトン・アセチレン法(ロッシュ法) アセトンとアセチレンを出発原料として合成する。工程は長いが、収率がよく、生成物の精製も容易である。
(2)イソプレン法(クラレ法) 石油C5留分から得られるイソプレンを出発原料とし、塩化プレニル、メチルヘプテノン、リナロールを経てゲラニオールを合成する。
(3)α(アルファ)-ピネン法(グリドコGlidco社) テレビン油から大量に得られるα-ピネンを原料としてリナロールを合成し、これを異性化してゲラニオールを合成する。
バラ系調合香料の主体であり、その他のフローラル系調合香料としても大量に使用される。また、シトラス(レモン、ライムなどの柑橘(かんきつ)類)、ティー、フルーツ、タバコなどのフレーバーにも用いられ、ヨノン、ビタミンEおよびAの製造原料でもある。
[佐藤菊正]