ムサシアブミ(読み)むさしあぶみ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムサシアブミ」の意味・わかりやすい解説

ムサシアブミ
むさしあぶみ / 武蔵鐙
[学] Arisaema ringens (Thunb.) Schott

サトイモ科(APG分類:サトイモ科)の多年草球茎があり、しばしば子球をつくる。偽茎は短く、葉は2枚で同大、葉身は3小葉からなり、小葉は通常先端が糸状に細まる。花期は2~5月。仏炎包(ぶつえんほう)は緑色または紫色を帯びて白い縦筋があり、舷部(げんぶ)は内側に巻き込む。花序の付属体は太い棒状で有柄。海岸近くの林下に生え、関東地方以西の本州から沖縄、および朝鮮半島南部、中国大陸、台湾に分布する。名は、仏炎包の形を、武蔵国(むさしのくに)でつくられていた鐙(あぶみ)に見立てたもの。

[邑田 仁 2022年1月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ムサシアブミ」の意味・わかりやすい解説

ムサシアブミ(武蔵鐙)
ムサシアブミ
Arisaema ringens

サトイモ科の多年草。関東地方以西のおもに海岸近くの林下に生える。地下にある球茎は扁球形で,その上部から多数のひげ根を出し,少数の子芋がつく。2~3枚の鱗片葉と大型の葉を2枚つける。葉身は3小葉から成り,小葉は菱形に近い広卵形で先端は急にとがって尾状に伸びる。上面は鮮緑色,下面は白色を帯びる。春に,1個の肉穂花序を出す。仏炎包の上部は特徴あるあぶみ形をなし,中部より下は筒状で耳の部分がよく発達している。雌雄異株和名は仏炎包の形が,昔,武蔵国でつくられたあぶみに似ているため。

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百科事典マイペディア 「ムサシアブミ」の意味・わかりやすい解説

ムサシアブミ

サトイモ科の多年草。本州(近畿以西)〜沖縄,東南アジアの林下にはえる。葉は1茎に2枚つき,3枚の小葉からなる。雌雄異株。3〜5月開花。肉穂花序は白色,仏炎包はあぶみ形で暗紫色山草として庭などに植えられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「ムサシアブミ」の意味・わかりやすい解説

ムサシアブミ

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世界大百科事典(旧版)内のムサシアブミの言及

【テンナンショウ】より

…伊豆諸島に分布するシマテンナンショウA.negishii Makinoもウラシマソウに類縁的には近いもので,球茎は蒸し煮して突き砕きだんごにして食べる。 ほかに日本にはムサシアブミA.ringens (Thunb.) Schott(イラスト),ミツバテンナンショウA.ternatipartitum Makino(イラスト)など3小葉からなる原始的な群と考えられるものや,冷温帯のブナ林を主たる生活領域とする5小葉の通常2枚葉をつけるユモトマムシグサA.nikoense Nakai群,日本海側多雪地帯から大陸部にかけて分布する1枚葉のヒロハテンナンショウA.robustum (Engl.) Nakai(イラスト)をはじめ,葉が1枚になった特殊なツクシマムシグサA.maximowiczii (Engl.) Nakai,オモゴウテンナンショウA.iyoanum Makino,セッピコテンナンショウA.seppikoense Kitamuraなど地方的な固有種など,多くの種が分化している。テンナンショウ属は東アフリカ,東アジアからマレーシア,それに北アメリカ東岸域に150種以上が知られており,ヒマラヤ東部から中国南部にかけての山地域で最も多様な分化をしている。…

※「ムサシアブミ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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