ジャワ原人を最初に発見したオランダの人類学者。アムステルダム大学で医学を学び,1886年に解剖学の講師となったが,進化論者E.ヘッケルの影響をうけ,類人猿と人類との移行形の化石を発見することを決意し,87年にオランダ植民地軍の軍医となってインドネシアへおもむいた。スマトラ島での2年間の探索は徒労におわったが,次のジャワ島でまずワジャク人の化石を発見し,91年にはソロ川のほとりのトリニールで,待望の頭蓋化石を発見した。脳の容積は現代人と類人猿のほぼ中間と推定されたが,付近で発見された大腿骨は現代人にひじょうに近い形態をもっていたので,直立した猿人という意味の学名(ピテカントロプス・エレクトス)を与えて94年に発表した。帰国後は,母校から名誉博士の称号を贈られて教授に就任した。今でこそデュボアの業績は人類学史上不滅のものとなっているが,原人発見当初の反響には批判的な内容のものが少なくなかったため,一時は化石を自宅の床下に秘匿したこともあったといわれる。
執筆者:山口 敏
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オランダの解剖学者、人類学者。アムステルダム大学で医学および博物学を学び、当時有名になったダーウィンの進化論に強い関心をもった。やがて、ダーウィンが予見した、ヒトとサルとの中間の化石を発見しようと決意し、1889年、軍医に志願してスマトラに渡った。翌1890年からジャワで調査を開始し、1891年にソロ川中流のトリニールで古い人類化石を発見、これにピテカントロプス・エレクトゥスPithecanthropus erectusという学名を与えた。これがジャワ原人の発見の端緒となったが、現在では他の同時代の化石人類とともに、ホモ・エレクトゥスHomo erectusとよばれている。発見当時は、人類の進化に関する知識が乏しかったために業績が評価されなかったが、やがてその正当性が認められ、アムステルダム大学の地質古生物学教授に就任し、また同大学の名誉学位が贈られた。
[埴原和郎 2018年11月19日]
アメリカの児童文学作家、画家。ニュー・ジャージー州に生まれる。19歳から子供の文学の創作を始め、『三人のおまわりさん』(1938)、『名探偵しまうまゲピー』(1942)などを発表。1947年、クラカタウ火山爆発を材料に奇抜な着想の気球旅行記『二十一の気球』を自身の挿絵入りで発表し、ニューベリー賞を受賞。奇想天外な着想をユーモアとウィット豊かに展開し、未来への夢をはぐくむ作風で多くの読者をつかんだ。
[神宮輝夫]
『渡辺茂男訳『三人のおまわりさん』(1965・学習研究社)』▽『渡辺茂男訳『二十一の気球』(講談社青い鳥文庫)』
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…この人骨は,頭蓋冠が低く,眼窩上隆起が強い点で原始的であったが,頭蓋腔容積は現代人に勝るとも劣らない大きさをもっていた。1891年にジャワのトリニールで,E.デュボアが発掘した化石頭蓋は,高さがさらに低く,頭蓋腔容積も約850mlと,現代人平均の約3分の2程度であった。デュボアは,この化石こそ,サル(ピテクス)とヒト(アントロプス)のあいだをつなぐ〈失われた環〉にちがいないと考え,これにピテカントロプスの名称を与えた。…
…時代的には更新世前期から中期にわたる。1891‐92年に中部ジャワのトリニールで,E.デュボアにより発掘され,94年ピテカントロプス・エレクトゥスPithecanthropus erectusと命名された頭蓋と大腿骨が,最初に発見された原人化石である。その後,ほぼ同じ進化段階にある化石人類が,ドイツのハイデルベルク,中国の北京,アルジェリアのテルニフィヌTernifineで発見され,それぞれホモ・ハイデルベルゲンシス,シナントロプス・ペキネンシス,アトラントロプス・マウリタニクスと命名された。…
…インドネシアのジャワ島中部のソロ川中流沿岸の村。1891年にオランダ人のE.デュボアが,初めてピテカントロプス・エレクトゥスの頭蓋骨をこの地で発見した。出土した地層は中部洪積世のカブーKabuh層であり,その層から出土した動物化石などによる動物層はトリニール相と呼ばれる。…
…インドネシア,ジャワ島中部のトゥルンガグンに近いワジャク盆地で出土した化石人類。1889年B.D.ファン・リートショーテンにより第1号(成人女性のほぼ完全な頭蓋と下顎骨破片)が,翌年E.デュボアにより第2号(成人男性の破損した頭蓋とほぼ完全な下顎骨)が発見された。人工遺物はみられなかったが,伴出する動物化石からその年代は更新世後期をさかのぼることはないとされている。…
※「デュボア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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