インドネシア,東部ジャワのガウィ市の西方15km,トリニール村の近くを流れるソロ河の河岸にある更新世人類遺跡。1891-93年にオランダ人解剖学者デュボアE.Duboisが発掘を行い,ヒトの頭骨,2点の大臼歯,大腿骨の化石を発見し,ピテカントロプス・エレクトスPithecanthropus erectusと命名した。この頭骨(Trinil 2)は,現在ではホモ・エレクトスの模式標本となっている。その後,4点のヒトの大腿骨が追加発見された。さらに,1906-08年にはドイツのセレンカM.L.Selenkaが行った大規模な発掘により,大量の動物化石が収集され,トリニール動物群と名付けられた。年代は,当初は中期更新世(78万年前以降)と見なされたが,1990年代以降にオランダのドゥ・ボスJ.de Vosたちの検討により,前期更新世の100万年前ほどと推定されている。大腿骨はあまりに現代的な形態なので,頭骨や大臼歯と同時代かどうか疑問がもたれている。発掘地点の対岸には,記念碑があり,〈P.e. 175m ONO 1891/93〉と書かれている。ホモ・エレクトス化石が,1891-93年の発掘によりここから175m東北東で発見されたという意味である。文化遺物は発見されていない。
→化石人類 →ジャワ原人 →ミッシング・リンク
執筆者:馬場 悠男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
インドネシア、ジャワ島中部、ソロ川中流域に位置する、ピテカントロプス(ホモ・エレクトゥス・エレクトゥス)の最初の出土地。1891年オランダのデュボアが、トリニール村を流れるソロ川の中州から頭骨を発見した。92年、頭骨出土地点から15メートル離れた地点で左大腿(だいたい)骨を発見し、94年にこれらの動物化石をピテカントロプス・エレクトゥスとして報告。1907~08年にドイツのセレンカが、中州を挟む両側の地層を組織的に調査し、ステゴドンゾウなどを標式化石とするトリニール層(中部更新世)の動物相、植物相を明らかにし、その後のジャワ島中部サンギランにおけるジャワ島更新世人類の研究の基礎を築いた。
[青柳洋治]
『鈴木尚著『化石サルから日本人まで』(岩波新書)』
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…ジャワ原人と訳される。ピテカントロプスの発見は,ジャワ島中央部を流れるソロ川沿岸のトリニールTrinilで,1891年から翌年にかけてデュボアが頭蓋冠と歯と大腿骨の化石を発掘したのに始まる。彼は脳頭蓋の形がヒトとサルの中間型であることと,大腿骨の形が現代人的であることから,〈直立した猿人〉という意味のラテン語学名〈ピテカントロプス・エレクトゥスP.erectus〉をこの化石人類につけて発表した。…
…ジャワ原人と訳される。ピテカントロプスの発見は,ジャワ島中央部を流れるソロ川沿岸のトリニールTrinilで,1891年から翌年にかけてデュボアが頭蓋冠と歯と大腿骨の化石を発掘したのに始まる。彼は脳頭蓋の形がヒトとサルの中間型であることと,大腿骨の形が現代人的であることから,〈直立した猿人〉という意味のラテン語学名〈ピテカントロプス・エレクトゥスP.erectus〉をこの化石人類につけて発表した。…
※「トリニール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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