デリック(その他表記)derrick

翻訳|derrick

デジタル大辞泉 「デリック」の意味・読み・例文・類語

デリック(derrick)

起重機の一。柱の根元ジブを斜めに取り付け、これを柱の頂上からのロープで俯仰させ、ジブの先端から貨物を吊る形式のもの。主に港湾使用。デリッククレーン

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「デリック」の意味・読み・例文・類語

デリック

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] derrick ) 旋回するポストの根元に傾斜したジブを取り付け、これをポスト頂上から数条のロープで俯仰させ、ジブの先端から荷重を吊る形式のクレーン。
    1. [初出の実例]「デリックあり、クレンあり」(出典:愛弟通信(1894‐95)〈国木田独歩〉大連湾占領後の海事通信)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「デリック」の意味・わかりやすい解説

デリック
derrick

貨物船荷役装置一種甲板に立てたデリックポスト支柱マストと兼用する場合もある)とこれに腕のように取りつけられたデリックブームからなり,ブームは自由に旋回したり傾斜したりする。通常,船の両玄に1基ずつを1組(1ガングgangと称する)としてハッチの前後に配置する。デリックブームの先端には貨物をつり卸しするための荷役索と滑車およびデリックブームを固定するためのつり索が取りつけられている。貨物の揚卸しや移動は,ふつう,左右2台のウィンチによって滑車を介して索を巻いたり緩めたりして行う。デリック装置はきわめて簡単な原理であるが能率がよく,能力は2~5tのものが多いが,50t以上300tくらいまで可能で,このような重量物用はヘビーデリックと称し,プラントや車両などの重量貨物の荷役に専用される。デリックのついた貨物船は港湾風景に必ず登場するものであったが,近年における輸送近代化に伴ってしだいにコンテナー船(コンテナー船の荷役には埠頭ふとう)のクレーンが使用される)にかわりつつあり,また一般貨物船の荷役装置もデリックから,整備や作業の準備に人手を要しない船上クレーンにかわりつつある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「デリック」の意味・わかりやすい解説

デリック
でりっく
derrick

船舶への貨物の積込みや揚荷作業に用いる荷役装置。デリックポストやマストなど上甲板に直立する柱の下端部に、自由に回転するグーズネックで取り付けて張り出したブームとよぶ腕木を主とする構造物である。ブームの上端は、ポストやマストの上部から張ったトッピングリフトと、舷側(げんそく)(ブルワーク)からのブームガイやプリベンターガイで支えられている。トッピングリフトとガイの張りぐあいでブームの向きと角度を調整する。ポスト、マストなどの根元近くのカーゴウィンチから伸びるカーゴフォールが、ブームの下端から上まで導かれてブームの先端から垂れ下がり、貨物を取り付ける。貨物の移動は、カーゴフォールの巻き上げとブームの回転を併用して行う。

 デリックによる荷役には二つの方式がある。〔1〕けんか巻き 二組みのデリックを、一基は船倉の直上に、一基は舷側の外まで張り出し、両方のカーゴフォールを同じ貨物に連結して調節しながら上下・水平に移動させて荷役を行う方式。〔2〕分銅巻き カーゴフォールで貨物を上下に移動させながら、デリックをポストかマストを中心に回転させて荷役を行う方式で、一基のデリックだけで行う場合と、デリックの回転運動を支持するためにもう一基のデリックを併用する場合がある。

[岩井 聰]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「デリック」の意味・わかりやすい解説

デリック

貨物船の荷役装置。旋回するマストの下部にジブ(腕)を取り付け,これをマストの頂部から張ったロープで俯仰(ふぎょう)させ,先端に荷重をつる。マストは基礎上に設けた特殊軸受でささえ,下部に取り付けた円輪に巻き付けたロープで旋回する。巻上げ,俯仰,旋回の動作は機外の三胴ウィンチで行う。現在ではクレーンにとってかわられつつある。
→関連項目荷役機械

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デリック」の意味・わかりやすい解説

デリック
derrick

荷役作業用クレーンの一種。直立した主柱 (マスト) ,その基部から斜めに突き出た腕木 (ブーム) ,および数本の操作用綱索から成る。荷役綱は腕木先端から下垂してフックで荷物を吊上げ,吊綱は腕木を引張って仰角を変え,控え索は腕木を旋回させて,荷物を移動させる。その操作はウインチ (ろくろ) とテークル (滑車装置) による。貨物船に普通にみられるが,埠頭や土木工事現場でも用いられる。吊上げ能力は通常3~8t,重量用で 20~50t程度である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

とっさの日本語便利帳 「デリック」の解説

デリック

デリック(Derrick。一七世紀)▼一七世紀の英国の絞首刑執行人。彼が執行した死刑は三〇〇〇を超すといわれ、その名は「絞首刑執行人」や「絞首台」を意味するようになり、現在では絞首台と形が似ていることから「起重機」の意になっている。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

世界大百科事典(旧版)内のデリックの言及

【甲板機械】より

…(2)荷役装置 鉱石運搬船やばら積船,コンテナー船などの専用船を除き,一般貨物船では貨物の積卸し,移動などの目的で荷役装置が設けられる。荷役装置には大別するとデリック装置式と甲板クレーン式がある。前者は直立したデリックポスト(支柱)と,その最下端に斜めに取り付けられ,索と滑車によって伏仰および回転できるようになっているデリックブーム(棒)の組合せで構成され,ブーム先端から下ろした荷役索(他端はウィンチドラムに取り付けられる)によって荷役を行う。…

※「デリック」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android