ドイツ、アメリカで活動した心理学者レビンが『トポロジー心理学の原理』(1936)のなかで主張した心理学の理論(場の理論)。位相心理学とも。レビンは行動の発生を心理学的に構成された力学的場理論の立場からとらえ、行動は生活空間の関数であると考える。生活空間にはある瞬間における主体の行動を決定するすべての条件が含まれるから、主体自身も過去や未来の非現実的条件もそのなかに含まれる。トポロジー(位相幾何学)という概念は量的なものを無視して点や面の関係を扱う数学を意味するが、それを借りて生活空間の構造を記述し、行動生起の可能性を空間的領域の関係に置き換えて説明するのがトポロジー心理学の特徴である。
たとえば、ある人がある目標に向かって行動するかどうかは、目標領域と人領域との間に移動の可能性があるかどうか、すなわち通路が開かれているか、どの領域を通過するか、障壁があるかなどによって決まると考えられる。だから、物理的に近い目標が心理的に近いとは限らないことや、代償価のある活動とない活動との違いを空間的に示すこともできる。また、パーソナリティーの発達を人の領域の分化としてとらえたり、非現実への逃避をトポロジー空間の層構造としてとらえたりすることもできる。なお、行動の可能性ではなく、実際にどういう行動がおこるかを明らかにするためには、方向と大きさをもったベクトルの概念が導入され、葛藤(かっとう)行動の解明などに役だっている。
[宇津木保]
『K・レヴィン著、外林大作・松村康平訳『トポロギー心理学の原理』(1942・生活社)』▽『K・レヴィン著、相良守次・小川隆訳『パーソナリティの力学説』(1957・岩波書店)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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