トリクロロ酢酸(読み)とりくろろさくさん(英語表記)trichloroacetic acid

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トリクロロ酢酸」の意味・わかりやすい解説

トリクロロ酢酸
とりくろろさくさん
trichloroacetic acid

脂肪族ハロゲンカルボン酸の一つ。略称TCA。わずかに特異臭をもつ潮解性無色固体。クロラール硝酸により酸化するか、光を当てながら塩素により酢酸塩素化するかして合成する。水、エタノールエチルアルコール)、エーテルに溶ける。溶液状態での酸としての強さは、酢酸、クロロ酢酸ジクロロ酢酸トリクロロ酢酸の順となり、有機酸としては強酸で、腐食性がある。熱水、希アルカリによりクロロホルムと二酸化炭素に分解される。腐食剤、角質溶解剤(たこ、いぼ取り)、タンパク質沈殿剤、生体内タンパク・脂質の分画剤などに用いられる。

[谷利陸平]


トリクロロ酢酸(データノート)
とりくろろさくさんでーたのーと

トリクロロ酢酸
  CCl3CO2H
 分子式 C2HCl3O2
 分子量 163.4
 融点  57.4℃
 沸点  197.5℃
 比重  1.6298(測定温度61℃)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トリクロロ酢酸」の意味・わかりやすい解説

トリクロロ酢酸
トリクロロさくさん
trichloroacetic acid

化学式 CCl3COOH 。強い腐食性をもつ潮解性の結晶。融点 57~58℃。酢酸よりも酸性が強い。酢酸の塩素化によっても得られるが,クロラールを硝酸で酸化すると容易に得られる。実験室では蛋白質の沈殿剤として利用される。皮膚にできた,たこ,まめ,いぼなどを除去するための角質溶解剤や除草剤などに用いられる。

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