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イギリスの英語学者、中世文学者、作家。1月3日、南アフリカに生まれる。3歳のときイギリスに移住、バーミンガムで育つ。オックスフォード大学を出て『オックスフォード英語辞典』の編集助手をつとめたあと、1920年からリーズ大学で教え、同大教授(1924~1925)、のちにオックスフォード大学教授(1925~1959)。学者としての業績には『ベオウルフ――怪物と批評家たち』(1937)のほか『サー・ガーウェインと緑の騎士』その他の編著などがあるが、一般には『指輪物語』三部作(1954~1956)を中心とする物語作者として知られる。この大著の前後に『ホビット』(1937/邦訳名『ホビットの冒険』)、没後刊行された『シルマリリオン』(1977/邦訳名『シルマリルの物語』)などの物語やいくつかの詩があって、全体として、人間より小柄のホビット族や妖精(エルフ)、小人(ドゥオーフ)、さらには魔法使いや竜なども活躍する壮大なファンタジーの世界が築かれる。中世の伝説や言語への深い知識に支えられたこれらの作品には熱狂的な読者も多い。9月2日没。
[村上淑郎 2018年7月20日]
『吉田新一訳『トールキン小品集』(1975/改題『農夫ジャイルズの冒険』・2002・評論社/評論社・てのり文庫)』▽『瀬田貞二訳『ホビットの冒険』上下(1999・岩波書店)』▽『瀬田貞二訳『指輪物語』全10冊(評論社文庫)』▽『ハンフリー・カーペンター著、菅原啓州訳『J・R・R・トールキン 或る伝記』新装版(1996・評論社)』
イギリスの中世学者,ファンタジー作家。南アフリカ生れ。オックスフォード大学を卒業後,《オックスフォード英語辞典》の編集に参画。同大学の古英語教授(1925-45),同大学マートン英語英文学教授(1945-59)などを歴任。大学では同僚のC.S.ルイスらと親交を結んだ。彼の最初の小説《ホビットの冒険》(1937)もホビット族の小人3人を主人公にしたものであるが,彼の最大傑作は60歳を過ぎて発表した,妖精や小人の活躍する三部作《指輪物語》(1954-55)である。中世文学の伝統を今に生かしたこの大長編は,ルネサンス以来はじめての本格的ロマンスといわれ,その豊かな幻想性,社会へのペシミズムと個人に対する希望的態度という基調のせいで,60年代以降の英米の若者たちの間で非常な人気を博した。この後,この三部作の時代よりもさらに前の時代を扱った,魔法の力をもった真珠をめぐる長編物語《シルマリリオン》を執筆していたが,未完のまま病没した。なお,この作品は息子の手で完成(1977刊)された。
執筆者:鈴木 建三
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…架空世界を取り扱った物語は,J.インジェローの《妖精モプサ》(1869),G.マクドナルドの《北風のうしろの国》(1871),R.キップリングの《ジャングル・ブック》(1894),E.ネズビットの《砂の妖精》(1902),K.グレアムの《たのしい川べ》(1908),J.M.バリーの《ピーター・パンとウェンディ(ピーター・パン)》(1911),W.デ・ラ・メアの《3びきのサル王子たち》(1910)にうけつがれ,ファージョンE.Farjeon《リンゴ畑のマーティン・ピピン》(1921)は空想と現実の美しい織物を織り上げた。さらにA.A.ミルンの《クマのプーさん》(1926)が新領域をひらき,J.R.R.トールキンの《ホビットの冒険》(1937),《指輪物語》(1954‐55)は妖精物語を大成する。C.S.ルイスが架空の国ナルニアの7部の物語(《ナルニア国ものがたり》1950‐56)で善悪の問題を取り扱い,トラバーズP.L.Traversの〈メリー(メアリー)・ポピンズ〉5部作(1934‐82)はユーモアをこめて新しい魔女をつくり出し,ノートンM.Nortonも人間から物を借りてくらす小人たちのミニアチュア世界を5部作(1952‐82)で描いてみせた。…
…明確な定義としてはこれが最初で,その後の幻想文学全般の活性化によって今日では,(1)幻想文学一般のうち怪奇や恐怖を主題としない作品,(2)SFのうち科学的論理性にこだわらぬ自由な発想によった作品,(3)舞台を現実ではなくまったく架空の神話的世界にもとめ,その中でかつての英雄冒険譚を展開させた作品,がファンタジーと呼ばれる。とりわけ(3)にはトールキンの《指輪物語》を筆頭に,アーサー王伝説やニーベルンゲン物語を現代によみがえらせたような大作が多く,〈ハイ・ファンタジーhigh fantasy〉ないし〈ヒロイック・ファンタジーheroic fantasy〉などと呼ばれて盛んに創作されている。 日常生活に非日常的なものが紛れこむことで新たな混乱や問題が考察されうる効果,すなわち〈異化作用〉は,リアリズムとは趣を異にするファンタジーの主要な役割である。…
※「トールキン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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