改訂新版 世界大百科事典 「ドゥームズデーブック」の意味・わかりやすい解説
ドゥームズデー・ブック
Domesday Book
1086年にウィリアム1世の命により作成されたイングランドの検地帳。名称は,検地帳の記載内容の権威を〈最後の審判の日(ドゥームズデー)〉にたとえたもので,12世紀以降用いられるようになった。ウィリアムはノルマン・コンクエストにより新たに支配するに至ったイングランドの事情を調査して税を徴収するため,各州(シャイア),各郡(ハンドレッド)の集会に陪審を招集し,各荘園ごとに,以下の各項について調査させた。王領地,エドワード懺悔王時代および調査時点の各荘園の保有者,その上級主君名,ハイド数(地積),直営地の犂および奴隷数,荘園内の小屋住み農と農奴・ソークマン(犂奉仕土地保有者)・自由農民の数,森林・草地・牧地・沼沢など共同地の事情,エドワード懺悔王時代以後の荘園内土地の増減,また荘園の価値等々で,これら詳細な報告を集め編纂させた。イングランド中世史研究上最も重要な史料で,原本ははじめウィンチェスター,次いでウェストミンスターに置かれたが,現在はロンドンのパブリック・レコード・オフィスに保存されている。2巻から成り,第2巻はエセックス,サフォーク,ノーフォークの東部3州のみが記載され,残りの州は第1巻に含まれている。ただし,当時イングランド王がまだ完全には把握していなかったノーサンバーランド,カンバーランドなどの最北部の州,および最重要の都市ロンドンとウィンチェスターとに関する記載は欠如している。最初の刊本は1783年に出版された。
執筆者:青山 吉信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報