日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドミノ理論」の意味・わかりやすい解説
ドミノ理論
どみのりろん
domino theory
アメリカにおいて、共産主義の勢力拡大に関して唱えられた理論。ドミノの駒(こま)(ボーン)を一列に立てて並べ、最初の駒を押すと次々に全部の駒が倒れていく、いわゆる将棋倒し現象が起こる。このことになぞらえたものである。具体的には、1954年春、フランスがインドシナでベトミン(ベトナム独立同盟)に敗退しつつあったとき、アメリカの外交指導者たちが、ベトナムで共産軍が勝利を収めればインドシナ全域が共産主義化し、やがて東南アジア全体が共産主義の脅威にさらされるとして唱え出したものである。アメリカが54年7月に成立したジュネーブ協定を無視して南ベトナムのゴ・ジン・ジエム政権を軍事的に支え、やがてベトナム戦争に大々的に介入していく際に、それを正当化するために用いられたのがこの理論であった。
[木村修三]