アメリカにおいて、共産主義の勢力拡大に関して唱えられた理論。ドミノの駒(こま)(ボーン)を一列に立てて並べ、最初の駒を押すと次々に全部の駒が倒れていく、いわゆる将棋倒し現象が起こる。このことになぞらえたものである。具体的には、1954年春、フランスがインドシナでベトミン(ベトナム独立同盟)に敗退しつつあったとき、アメリカの外交指導者たちが、ベトナムで共産軍が勝利を収めればインドシナ全域が共産主義化し、やがて東南アジア全体が共産主義の脅威にさらされるとして唱え出したものである。アメリカが54年7月に成立したジュネーブ協定を無視して南ベトナムのゴ・ジン・ジエム政権を軍事的に支え、やがてベトナム戦争に大々的に介入していく際に、それを正当化するために用いられたのがこの理論であった。
[木村修三]
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…〈冷戦〉は第三世界にも拡大していった。ことにアメリカは第三世界のナショナリズムに理解を示すよりも〈冷戦〉を重視し(典型例はインドシナの敗北はフィリピンから日本の崩壊につながるという〈ドミノ理論〉である),〈反米〉政権の転覆(1953年イラン,54年グアテマラ),〈親米〉政権への援助(南ベトナム,韓国,台湾等),反共軍事同盟の形成(1954年SEATO(シアトー),55年米台相互援助条約,55年アメリカは参加しないもののその影響下にあったバグダード条約)という政策を展開していった。第三世界ではアメリカとソ連の対立に加え,アメリカと中国の対立も顕著となった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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