ドイツの詩人。ウェストファーレンの古い男爵家の娘として生まれ,ボーデン湖畔の館で世を終えるまで,外面的には格別の波乱を経験することもなしに,独身のままほぼ平穏な生涯を送った。しかし外部生活が静かだっただけ,内向した思念の奥行きは一層深められ,そこから数々の精妙な作品が生み出された。敬虔なカトリック信者として宗教詩の類も多く書いたが,何よりも,自然の形象をその細部にいたるまで丹念に確かめながら,細密画の風景のように表現する手法が特徴的である。しかも確かめられ定着された風景は,表面の静けさの下に,世界と生の深みの暗い不気味な消息をうかがわせている。その意味で,時代に先んじて象徴主義的な詩風を予告しているといえる。小説《ユダヤ人のブナの木》(1842)も一見自然主義風な悲惨物語だが,厳しく引き締まった描写の底に人生への深遠な観想を秘めた傑作である。
執筆者:川村 二郎
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ドイツの女流詩人。ウェストファーレンの古い貴族の家に生まれ、読書や知識人との交友で教養を積み、文筆活動に入る。病苦と周囲の無理解に耐え、時流を超える独自の詩作を続け、ボーデン湖畔のメールスブルクで孤独な生涯を閉じた。懐疑と不安に襲われながら、信仰の苦悩を披瀝(ひれき)する死後刊行の宗教詩『宗教の一年』(1851)が代表作。現象の奥に神秘的な力の支配を予感させる自然詩やバラードは、きわめて高い芸術的完成度を示している。故郷の犯罪事件に取材した短編小説『ユダヤ人の橅(ぶな)』(1842)は、犯罪の心理的、社会的要因を克明につく反面、人知を超える魔的な力や神の摂理が暗示され、キリスト教的寛容を訴える作者の敬虔(けいけん)な意図がうかがわれる。
[杉本正哉]
『番匠谷英一訳『ユダヤ人の橅の木』(岩波文庫)』
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