日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナウマン鉱」の意味・わかりやすい解説
ナウマン鉱
なうまんこう
naumannite
セレン化銀の鉱物。針銀鉱のセレン置換体に相当するが別構造。アギラル鉱は同構造と考えられ、セレン銀銅鉱eucairite(化学式CuAgSe)と三者でセレン銀銅鉱‐ナウマン鉱系を構成する。自形はかろうじて立方体の痕跡(こんせき)をとどめるものがあり、高温相(立方)の仮晶と考えられている。転移点128℃。高温相の原子配列は急冷しても保存されない。浅~深熱水性鉱脈型金・銀鉱床に産する。日本では鹿児島県串木野(くしきの)市(現、いちき串木野市)串木野鉱山、北海道下川町珊瑠(さんる)鉱山(閉山)などから知られている。
共存鉱物は針銀鉱、セレン鉛鉱clausthalite(PbSe)、アギラル鉱、銀安四面銅鉱、自然金、黄銅鉱、黄鉄鉱、閃亜鉛鉱(せんあえんこう)、石英、方解石、苦灰石、正長石など。同定は表面が錆(さ)びやすく、鉄黒色のものが褐色を帯びた暗灰色になり、水分があると周囲に青緑色のしみが生ずることによる。ただしこれはアギラル鉱でも見られるので決定的な特徴ではない。粉末にならないことは針銀鉱と同様である。命名はドイツの鉱物学者カール・フリードリッヒ・ナウマンCarl Friedrich Naumann(1797―1873)にちなむ。
[加藤 昭 2018年5月21日]