日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナラム・シン」の意味・わかりやすい解説
ナラム・シン
ならむしん
(?―前2218)
古代メソポタミアの古アッカド王国第4代目の王(在位前2254~前2218)。古アッカド王国の中興の祖で、彼の勇名は伝説化され後代にまで伝えられた(「クタの王」「ナラム・シン叙事詩」など)。事実、東方のエラム、西方のシリア(エブラ王国を含む)、北方のスバルトゥと、彼が当時の古代オリエント地域を広く軍事的に征服したことは、その戦勝碑文からも知られる。また、戦勝碑に浮き彫りされた彼の雄姿は、メソポタミアの英雄像の一原型として美術史的にも重要な意味をもつ。彼は後の王たちによってしばしば神格化され、その石像は崇拝の対象となった。古アッカド王国自体は彼の死後急速に衰えていった。なお、彼の名の意味は「シン(月神)の寵児(ちょうじ)」。
[月本昭男]