ナワシロイチゴ(読み)なわしろいちご

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナワシロイチゴ」の意味・わかりやすい解説

ナワシロイチゴ
なわしろいちご / 苗代苺
[学] Rubus parvifolius L.

バラ科(APG分類:バラ科)キイチゴ属の落葉低木。茎はつる状となってはい、全体に刺(とげ)がある。葉は互生し、3出複葉、まれに5小葉からなる羽状複葉。小葉は菱(ひし)状円形から広卵形、縁(へり)に鋸歯(きょし)がある。葉裏は白い軟毛があるか、またはない。5~7月、前年の茎から出た新枝の先に、淡桃色で径約1.5センチメートルの5弁花を数個開く。花弁は直立し、雄しべに寄り添う。集合果球形で赤く熟し、食べられる。低地から山地に普通に生え、日本全土、および千島、朝鮮半島、中国、ベトナムに分布する。名は、苗代のころ(6月)に果実が熟すことによる。伸長した茎の先端が着地して発根し、新しい株となる。果実が黄熟する品種をキミノナワシロイチゴというが、珍しい。

[鳴橋直弘 2020年1月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナワシロイチゴ」の意味・わかりやすい解説

ナワシロイチゴ(苗代苺)
ナワシロイチゴ
Rubus parvifolius

バラ科の落葉低木。アジア東部に分布し,日本では各地の原野路傍にごく普通にみられる。高さ 30cmぐらいになるが,普通横に長くはい,茎の長さは 1.5mぐらいに達し,茎や葉にとげがある。葉は互生し,普通3出複葉で,各小葉は先が丸く細かい鋸歯があり,表面緑色裏面は白い。5~6月に,集散花序を枝の上部に腋生または頂生し,淡紅紫色の5弁花を数個ずつつける。花序には軟毛が密生している。核果はやや大きく,多数集って球形の集合果となり,6月頃濃い赤色に熟して食べられる。

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