保育所,児童養護施設などの児童福祉施設で,一定の資格をもって子どもの保育に携わる女子職員。当初はナースnurseの訳語で子どものお守役というほどの意味であった。日本では第2次大戦前,幼稚園令(1926)などにより幼稚園で保育にあたる職員も保姆と呼ばれ(戦後,学校教育法により〈教諭〉と改称),たんなる子守ではなく,家庭の保育を補い,心身の発達に助力し性格の形成のため遊戯,唱歌,観察,談話,手技などを教える活動にあたり,免許状も必要とされる専門職であった。一方,戦前の託児所の場合は免許状の必要はなく,資格についての規定もなかった。1936年,心理学者城戸幡太郎の提唱により,幼稚園,託児所両者の保姆と心理学,教育学の研究者との共同研究会,保育問題研究会が設けられ,国家統制により43年解散を余儀なくされるまで研究がつづけられた。戦後は保母と称し,児童福祉法施行令(1948)により,厚生大臣の指定する保母養成学校を卒業した者か,都道府県知事が行う保母試験に合格した者に与えられる資格となった。法律上の整備と社会的要請から,保母は保育活動に不可欠な教育学,心理学,生理学,医学,福祉学などについての知識と指導技術の習得がますます必要とされるようになった。労働条件は十分改善されてはいないが,そのなかで自覚的な保育の研究・実践の運動がつづき,集団保育の成果をあげている。70年代に入り,保育の専門職を女性に限る必要はないとの主張が生まれ,子どもと保育に関心をよせる若い男性の増加などから〈保父〉が出現し,保母養成機関であった〈高等保母学院〉は〈高等保育学院〉と改称,男子の入学が認められるようになった。なお,児童福祉施設の職員には,保母のほかに児童指導員,寮母,教護および児童厚生員などがある。
→幼児教育
執筆者:山住 正己
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保育所、児童養護施設など児童福祉施設において児童の保育に従事する女性の職名であったが、1998年(平成10)の児童福祉法改正により、男性・女性のいずれにもふさわしい名称として「保育士」に改められた(実施は1999年から)。
保母は、もと保姆(ほぼ)という用語で、幼稚園で幼児を保育する女性に用いられていた。しかし、1947年(昭和22)制定の学校教育法によって、幼稚園が小学校などと同様、学校となるとき、従来の保姆でなく教諭に改められ、女性だけでなく男性もその資格を得、幼稚園教諭となることができるようになった。その後、保母は児童福祉施設で保育に従事する女子だけの名称となったが、1977年、児童福祉法施行令が改正され、男子も「保母に準ずるもの」と呼称され、保母同様児童福祉施設において児童の保育に従事することができるようになった。さらに1999年(平成11)4月より児童福祉法の改正実施で「保育士」が用いられている。
[岡田正章]
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