日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニキーチン」の意味・わかりやすい解説
ニキーチン(Ivan Savvich Nikitin)
にきーちん
Иван Саввич Никитин/Ivan Savvich Nikitin
(1824―1861)
ロシアの詩人。ボロネジの富裕な町家に生まれる。神学校に学んだ(1833~43)が、家が破産して中退し、20歳に満たぬ青年が旅館を経営し一家を支えねばならなかった。詩壇に登場したのは1853年で、初期の詩には宗教的・牧歌的モチーフの作品が多いが、下層の民衆の悲痛な命運を歌った詩もみられる。処女詩集(1856)がチェルヌィシェフスキーの痛烈な批判を浴びて落胆するが、それを転機にリアルに現実を直視し始め、市民詩派へ接近した。代表作はドブロリューボフが称賛した叙事詩『富農』(1854~57)である。晩年に開いた書店はボロネジの文学的サロンとなり、地域文化の発展に寄与した。
[島田 陽]