ニッコウキスゲ(読み)にっこうきすげ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニッコウキスゲ」の意味・わかりやすい解説

ニッコウキスゲ
にっこうきすげ / 日光黄菅
[学] Hemerocallis dumortieri C.Morren var. esculenta (Koidz.) Kitam. ex M.Matsuoka et M.Hotta
Hemerocallis middendorffii Trautv. et Meyer var. esculenta (Koidz.) Ohwi

ユリ科(APG分類:ススキノキ科)の多年草ゼンテイカ(禅庭花)ともいう。地下茎は短く、多数あり、肥厚する部分がある。花茎は直立し高さ40~70センチメートル。葉は叢生(そうせい)し、鮮緑色で軟らかく、幅1.5~2.5センチメートルで上部は下垂する。6~8月、茎頂に総状花序をつける。花は橙黄(とうこう)色、漏斗(ろうと)形の6弁花で弁先がやや反り返り、包葉は狭卵形。本州中・北部の海岸低地から高山帯下部の湿潤草原に生え、霧ヶ峰、尾瀬ヶ原と飯豊(いいで)山(新潟・福島・山形3県の県境)の群落は有名である。

 変種のエゾゼンテイカはニッコウキスゲより花序は短く、包葉は広卵形、花は濃橙黄色。北海道、千島列島南部、樺太(からふと)(サハリン)から東シベリア、中国東北部の低地および高層湿原に広く分布する。同じく変種のトビシマカンゾウは葉が長く60~90センチメートル、花茎も長く0.8~1.2メートルになる。山形県飛島と新潟県佐渡島の海岸草地に生える。

河野昭一 2019年1月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニッコウキスゲ」の意味・わかりやすい解説

ニッコウキスゲ
Hemerocallis dumortieri var. esculenta

ワスレグサ科の多年草。ゼンテイカともいう。山地や高山の草原に群生することが多い。地下茎は短く,根は赤褐色で強く,ところどころに肥大部をもつ。葉は叢生し,2列に並んでつく。夏に,葉心より 1本の長い花茎を直立し,上部は 2分岐して各先端に 3~4個の花を総状につける。花被は濃い橙黄色で 1日だけ開いてしぼむ。しかし次々に別の花が開くので全体としての花期は長く,群落全体がオレンジ色に遠望できる。果実楕円形蒴果で,黒い種子を多数生じる。和名は「日光」の地名に基づいたもの。本州中部以北,北海道,南千島,サハリンに分布する。尾瀬ヶ原や日光霧降,霧ヶ峰連山などの大群落は有名である。

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百科事典マイペディア 「ニッコウキスゲ」の意味・わかりやすい解説

ニッコウキスゲ

ゼンテイカとも。北海道,本州中北部の高原の草地にはえるユリ科の多年草。北地では,海岸にもはえる。葉は線形で2列に根生する。初夏,長さ40〜80cmの花茎を出し,オレンジ色で長さ10cm内外の花を数個つけ,日中に開く。花被片は6枚。若葉やつぼみなどは食べられる。
→関連項目カンゾウ(萱草)

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世界大百科事典(旧版)内のニッコウキスゲの言及

【キスゲ】より

…橙黄色の花をつける昼咲き群にはいろいろなものがある。尾瀬の大群落で有名なゼンテイカ(別名ニッコウキスゲ)H.dumortierii Morren var.esculenta (Koidz.) Kitam.(イラスト)は近畿北部から北海道にかけての高山の湿原を中心に分布するが,分布域の北部では低地や海岸にも見られ,そのなかで大型の海岸型になったものがトビシマカンゾウH.dumortierii var.exaltata (Stout) Kitam.で山形県の飛島や佐渡の海岸草原に分布する。基本変種のヒメカンゾウH.dumortierii var.dumortierii(英名narrow dwarf day‐lily)は日本で栽培されていた園芸品種で,名前のように2~数個の花をつけるかわいらしいカンゾウの1種である。…

※「ニッコウキスゲ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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