ヌマスギ(読み)ぬますぎ(英語表記)bald cypress

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヌマスギ」の意味・わかりやすい解説

ヌマスギ
ぬますぎ / 沼杉
bald cypress
[学] Taxodium distichum (L.) Rich.

スギ科(分子系統に基づく分類:ヒノキ科)の落葉高木。ラクウショウ(落羽松)ともいう。根は、水中や湿地に生えるものは特有の根張りをなし、タケノコのような気根地中から直立させる。大きいものは高さ45メートル、径4メートルに達する。樹皮は灰褐色。葉は線形で枝の両側に羽状に並び、秋には褐色に色づき、枝とともに落下する。雌雄同株。開花は4月。球果は小枝の先端につき、球形または楕円(だえん)状球形で長さ2~3センチメートル、10月ころ暗褐色に熟す。種子はやや大形のくさび形。北アメリカ南部諸州からメキシコに分布し、とくにミシシッピ川流域の沼地、湿地などに多く生える。日本には明治初期に渡来し、各地の湿気の多い公園、庭園、社寺境内などに植栽される。材は軽軟で地中、水中での耐久性が強く、屋根板、杭(くい)、枕木(まくらぎ)、温室材料などに使われる。

[林 弥栄 2018年6月19日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヌマスギ」の意味・わかりやすい解説

ヌマスギ(沼杉)
ヌマスギ
Taxodium distichum; bald cypress

スギ科の落葉高木で高さ 50mにもなる。別名ラクウショウ (落羽松) 。フロリダ州など北アメリカ南東部の沼地や湖畔の湿地に自生する。水湿地で呼吸が困難なため根のところどころから呼吸根を直立させる特性がある。葉は線形をしており扁平で鋭頭,枝の両側に羽状に並び,秋に褐色に変り枝とともに落ちる。球果は球形ないし楕円状球形で長さ約 2cm。日本でも庭園,公園などの湿地に植えられる。材は耐久力が強く屋根板,くい (杭) ,温室材料として用いられる。近縁種にメキシコ産のメキシコサイプレスがあるが,これは幹の直径が世界最大級の樹木の一つである。またポンドサイプレス T. distichum var. pendulumは,葉が鱗片葉になった変種で枝先が垂れ下がり樹形が美しいので,欧米で装飾樹とされる。シダレスギの和名もある。

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