日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネズビット」の意味・わかりやすい解説
ネズビット
ねずびっと
Edith Nesbit
(1858―1924)
イギリスの女流作家。ロンドンに生まれ、幼時をフランスやドイツで過ごす。10代から詩作を始め、フェビアン協会の創立者の一人ブランドと結婚後は、生計を支えるためさまざまなジャンルで仕事をしたが、約100冊に及ぶ著作の半数を占める児童文学によって記憶される作家となる。最初の重要な作品は『宝探しの子どもたち』(1899)で、アンドリュー・ラングは「全く新しい独創的な冒険物語」と評した。現実のなかに展開する冒険物語の系列と並んで、現実と非現実を混合したユーモラスなファンタジー『砂の妖精(ようせい)』(1902)そのほか多くの長・短編のファンタジーを書いたことから、20世紀のイギリス児童文学の母胎とみなされ、多くの作家に影響を与えた。
[猪熊葉子]
『吉田新一訳『宝さがしの子どもたち』(1974・福音館書店)』▽『岸田衿子・前田豊司訳『砂の妖精』(1976・学習研究社)』▽『J・R・タウンゼンド著、高杉一郎訳『子どもの本の歴史』上下(1982・岩波書店)』