ネズ(読み)ねず

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネズ」の意味・わかりやすい解説

ネズ
ねず
[学] Juniperus rigida Sieb. et Zucc.

ヒノキ科(分子系統に基づく分類:ヒノキ科)の常緑低木または高木ネズミサシ(鼠刺し)ともいう。大きいものは高さ20メートル、径1メートルに達する。大木小枝はよく垂れ下がる。樹皮は灰赤褐色。葉は針状で細長く、触ると痛い。雌雄異株。4月、雌・雄花とも前年枝の葉腋(ようえき)に1個ずつ開く。雄花は楕円(だえん)形、緑色の鱗片(りんぺん)の中に2個の葯(やく)があり、黄色の花粉を出す。雌花は卵円形で質が厚く、心皮は緑色で3枚、おのおの2個の胚珠(はいしゅ)がある。果実球形で厚肉質、翌年または翌々年の10月ころ紫黒色に熟す。種子は2、3個あり、卵形で淡褐色。山地丘陵日当りのよいやせ地に生え、しばしば群生する。本州から九州、および朝鮮半島、中国北部、東北部、ウスリーに広く分布。瀬戸内地方には野生が多い。庭木盆栽にする。材は木目が緻密(ちみつ)で堅く光沢があり、建築、土木、器具彫刻などに利用する。

[林 弥栄 2018年6月19日]

文化史

ネズの名はネズミサシに由来し、ネズミの出没する穴や通路にその針状の葉を置き、防いだことからついた。盆栽などでは杜松(としょう)とよばれる。

 ジンの香りづけに使うネズは別種のセイヨウネズ(セイヨウトショウ)J. communis L.のことで、日本にはその変種とされるリシリビャクシンJ. c. var. saxatilis PallasやミヤマネズJ. c. var. nipponica (Maxim.) Wilsonなどが分布する。果実は甘い香りがある。その香りは地域によって差があり、イタリア、ハンガリー、南スラブ(旧ユーゴスラビア)諸国、チェコ、スロバキアなどの高山が主産地である。

[湯浅浩史 2018年6月19日]

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改訂新版 世界大百科事典 「ネズ」の意味・わかりやすい解説

ネズ
needle juniper
Juniperus rigida Sieb.et Zucc.

暖地にみられるヒノキ科の常緑小高木で,針葉の先が硬くとがり,触れると痛いのでネズミサシともいう。古名はムロ。高さ3~10m,直径30cmに達し,幹の樹皮は灰褐色で薄くはげる。小枝は先が垂れる。針葉は3輪生し,基部に関節がある。雌雄異株で,4月前年枝の葉腋(ようえき)にそれぞれ楕円形の雄花,球形の雌花を単生する。翌年の秋に径1cmほどの球形で黒紫色ないし褐色の肉質の果実を結び,中に3個の種子を包む。岩手県以南の本州,四国,九州,朝鮮,中国北部および東北部に分布し,向陽のやせ地に生える。心材は濃褐色で水湿に強く,量は少ないが,土台,杭,農具の柄などに用いる。ネズミサシ属は北半球に約15種があり,ビャクシン属Sabina約45種をこれに含めることもある。日本には,九州以北サハリンまでの海岸に生える匍匐(ほふく)性のハイネズJ.conferta Parl.,本州北部の高山に生える低木性のミヤマネズJ.communis L.var.nipponica (Max.) Wils.と北海道の高山からシベリアにかけて分布するリシリビャクシンvar.saxatilis Pall.があり,両変種の母種セイヨウネズ(英名common juniper)は北半球に広く分布し,幹が立って,ときに高さ6~7mに達する。その球果を入れた蒸留酒がジンである。
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百科事典マイペディア 「ネズ」の意味・わかりやすい解説

ネズ

ネズミサシとも。ヒノキ科の常緑低木〜小高木。本州〜九州,東アジアの乾燥した日当りの良い山地にはえる。葉は3本ずつ輪生し,針状でかたく先は鋭くとがる。雌雄異株。4月開花。雄花は楕円形,雌花は卵円形肉質で,ともに緑色。果実は2〜3年後紫黒色に熟す。材は建築,器具等に用い,果実は杜松子(としょうし)といい薬用。葉が痛いのでネズミを防ぐということから,この名がある。
→関連項目ジンハイネズ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ネズ」の意味・わかりやすい解説

ネズ
Juniperus rigida

ヒノキ科の常緑低木または高木。ネズミサシともいう。本州中部以西,四国,九州,朝鮮半島,中国北部に分布。丘陵や山地などの日当りのよいやせ地に生える。高さ2~3m程度のものが多いが,まれには 20mにも達するものもある。大木の小枝はよく垂れ下がる。葉は鋭針形で3枚輪生。長さ 1.5cmほどで上面の中央に縦の溝がある。雌雄異株。4月頃開花する。果実は球形で径5~8mm。材は木理が緻密で光沢があり,建築,器具,彫刻などに利用される。庭木や盆栽にもされる。果実は利尿剤,リウマチに効がある。

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