日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノウム・オルガヌム」の意味・わかりやすい解説
ノウム・オルガヌム
のうむおるがぬむ
Novum Organum
イギリスのルネサンス期最大の思想家F・ベーコンの主著の一冊。『学問の大革新』全六部として予定されていた書の第二部にあたる。1620年刊。「新機関」と訳される。万学の研究の機関、すなわち方法論を目ざしたアリストテレスの論理学の書『オルガノン』に対して、それが知識の拡大に役だたないという認識の下に、知識を拡大する新しい帰納法、科学方法論としての論理の書であろうとする意図をもって、この題目が与えられたもの。四つのイドラ(偶像)の批判は、積極的見解の提出に先だち、前途の障害を取り除くための予備的部門をなす。帰納法への考えには、一方では伝統的思考法へのとらわれがあるが、他方では近代自然科学の法則の帰納的抽出に通ずる方向がみられる。
[杖下隆英]
『桂寿一訳『ノヴム・オルガヌム』(岩波文庫)』