改訂新版 世界大百科事典 「ハイガイ」の意味・わかりやすい解説
ハイガイ (灰貝)
ribbed cockle
Tegillarca granosa
フネガイ科の二枚貝。殻を焼いて貝灰をつくり顔料としたのでこの名がついた。殻は丸みある方形で,長さ5cm,高さ4cm,膨らみ3.5cmで,厚く堅固。白色で灰黄色の皮で覆われているが,老成するとはげ落ちる。18本内外の太くて結節のある肋があり,左右の殻頂の間は菱形の平たい面となり黒い。内面も白色で両殻のかみ合わせに多くの小さい歯が並ぶ。軟体は血液にヘモグロビンを含むので赤みを帯びる。方言でチンミといわれるのは珍味でなく赤い血身の意。産卵期は8~9月,2年で2cmになる。西太平洋,インド洋に広く分布し,内湾の潮間帯の泥底にすむ。東京湾岸の貝塚から多数出土するが現在は生息しておらず,分布が西日本の有明海,瀬戸内海などに限られている。化石は東北地方からも出土する。泥上に沈殿した有機物を食べる。雌雄異体で,8~9月に産卵する。肉は美味で焼いたり,むき身にして食用とする。東南アジアでは盛んに養殖されている。
執筆者:波部 忠重
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報