ハクウンボク(英語表記)Styrax obassia Sieb.et Zucc.

改訂新版 世界大百科事典 「ハクウンボク」の意味・わかりやすい解説

ハクウンボク
Styrax obassia Sieb.et Zucc.

山中にみられるエゴノキ科の落葉高木で,和名は白花の満開したさまを白雲に擬したものである。別名オオバジシャ。高さ12m,径25cmに達し,小枝は帯紫褐色で,外樹皮が薄くはがれる。一年生枝は先端が枯れ落ちて仮頂芽をつくる。葉は互生し,ほぼ円形で先は急にとがり,長さ10~20cm,縁にはまばらに小さい歯牙がある。葉柄の基部がふくらんで芽を包む。5~6月,本年枝から長さ10~20cmの総状花序を頂生し,15~20個の白い花をつける。花冠は長さ約2cmで深く5裂し,中に10本のおしべと,1個の花柱の長いめしべがある。9月,長さ15mm前後の卵円形で先のとがった蒴果(さくか)を結ぶ。北海道中部から九州までと,朝鮮半島,中国東北区,中国の温帯各地に分布する。材は淡黄白色緻密(ちみつ)で堅く,傘のろくろ将棋の駒などの器具,彫刻材に用いる。また,種子の油を絞ってろうそくを作り,木は庭園にも植えられる。葉がより小さく鋸歯の粗いコハクウンボクS.shiraiana Makinoは,本州関東以西,四国,九州と朝鮮南部に分布する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハクウンボク」の意味・わかりやすい解説

ハクウンボク
はくうんぼく / 白雲木
[学] Styrax obassia Sieb. et Zucc.

エゴノキ科(APG分類:エゴノキ科)の落葉高木。オオバジシャともいい、学名obassiaはこの名に基づいた。樹皮は暗灰色で、小枝は表皮がはげ、冬芽は葉柄の基部に包まれる。葉は互生し、卵円形で長さ10~20センチメートル、縁(へり)に浅く切れ込む鋸歯(きょし)があり、裏面灰白色で星状毛が密生する。5~6月、枝先に8~17センチメートルの総状花序をつくり、多数の白色花を下向きに開く。花冠は深く5裂し、長さ約2センチメートル。果実は卵円形で長さ約1.5センチメートル、白い星状毛を密生する。山地に生え、北海道から九州、および朝鮮半島、中国に分布する。庭木として植え、材は淡黄白色、緻密(ちみつ)でろくろ細工に用いる。名は、樹上に白色花が満開になったようすを白雲に見立てたもの。

[小林義雄 2021年4月16日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハクウンボク」の意味・わかりやすい解説

ハクウンボク(白雲木)
ハクウンボク
Styrax obassia; fragrant styrax

エゴノキ科の落葉高木で,アジア東部の温帯に分布する。日本各地の山地にみられる。高さ5~10mになる。互生する葉は大きく,ほとんど円形で直径 10~20cmあり,下面に細毛が密生して白色に見える。初夏に総状花序をなし,多数の白色有柄の花をつける。萼は杯状で,花冠も長さ 2cmほどの深い杯状をなし5つに裂ける。花柄や花冠に白い星状毛が密に生える。果実は円形で熟すると開裂する。果皮にサポニンを含む。材はろくろ細工などに使用される。

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百科事典マイペディア 「ハクウンボク」の意味・わかりやすい解説

ハクウンボク

オオバヂシャとも。エゴノキ科の落葉高木。日本全土,東アジアの山地にはえる。葉は円形でエゴノキより大きく長さ10〜20cm,先が鋭くとがり,裏面は白く,葉柄の基部は冬芽を包む。5〜6月,新枝の先に白色の花を総状に下垂して開く。花冠は長さ約2cm,深く5裂する。果実は卵形で9〜11月,熟して裂け,褐色の種子を出す。材を細工物,樹を庭木とする。

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