改訂新版 世界大百科事典 「ハナガサノキ」の意味・わかりやすい解説
ハナガサノキ
Morinda umbellata L.
アカネ科の常緑性低木で,しばしばつる状となる。インドネシアでは根から黄色染料をとる。枝はよく分枝し,無毛,乾くと全体が黒くなる。葉は対生し楕円形,長さ6~12cm。花は短い枝の先に集まり,子房が合着して塊状となり,花冠は筒状漏斗形,白くて美しい。名前は花の咲いたようすを花傘にみたてたもの。子房は下位,2心皮からなるが1室で,下垂する四つの胚珠がある。液果は果序全体がひと塊となり,直径1cm,赤く熟す。屋久島,種子島,琉球,さらに中国南部,東南アジアに広く分布する。
ヤエヤマアオキ属Morindaは世界の熱帯に約80種が知られ,根に黄色色素モリンジンmorindinやアントラキノン類を含み,染料として利用される。沖縄以南の海岸に分布するヤエヤマアオキM.citrifolia L.(英名Indian mulberry)は小高木となり,集合果は白く,長さ4cm,内部が空胴となり水に浮き,海流によって散布される。根は染料とされ,赤色から紫色がかった褐色に染色する。東南アジアでは花序,果実,若葉を薬味として食用とし,また民間薬としても利用する。成葉は大きく毛がないため,食物を包むのに使う。これらの用途のため,インドや東南アジアで栽培され,つややかな緑葉を観賞するため庭園に栽植もされる。
執筆者:福岡 誠行
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報