ハナノキ(読み)はなのき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナノキ」の意味・わかりやすい解説

ハナノキ
はなのき / 花木
[学] Acer pycnanthum K.Koch

カエデ科(APG分類:ムクロジ科)の落葉高木。4月初め、新葉に先だって深紅色の花を開く。秋の紅葉は美しい。ほかのカエデと異なり、果実は早く5月初めに熟す。長野愛知岐阜滋賀の四県にまたがるごく限られた地域に分布する希少植物で、国や県の天然記念物に指定されている。滋賀県のものは植栽と考えられる。最近は庭園樹ともする。深紅色の花が美しいので、「花の木」の名がある。

緒方 健 2020年9月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハナノキ」の意味・わかりやすい解説

ハナノキ(花之木)
ハナノキ
Acer rubrum var. pycnanthum

カエデ科の落葉高木。主として木曾川流域にみられ,長野,愛知,岐阜各県の山間湧水のある湿地にまれに生える。トウカエデ A. buergerianumに似て鋸歯のある葉を対生し,秋に紅葉する。葉の上面は濃緑色で,下面は白色雌雄異株で,春に葉の出る前に濃紅色ないし紅褐色の花を前年出た枝の先端に多数束生し,開花時は全株が真紅に燃えて美しい。果実は翼果で翼はほぼ直角に開く。北アメリカ東部に分布するレッドメープル A. rubrum変種とされ,日本には上記の場所にだけ産する。カエデの仲間では特異的なものであり,隔離分布をする著しい例である。

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百科事典マイペディア 「ハナノキ」の意味・わかりやすい解説

ハナノキ

ハナカエデとも。カエデ科の落葉高木。本州中部の山地の湿地にまれにはえ,庭にも植えられる。葉は対生し,トウカエデに似て3裂,裂片は先がとがり,裏面は粉白色をなす。紅葉が美しい。雌雄異株。4月,新葉に先だって開花。雄花は多数集まり鮮紅色,雌花は紅色を帯びる。果実は6月に熟し,2枚の翼は鋭角に開く。

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改訂新版 世界大百科事典 「ハナノキ」の意味・わかりやすい解説

ハナノキ

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世界大百科事典(旧版)内のハナノキの言及

【カエデ(楓)】より

…本州,四国,九州の温帯にあるコミネカエデA.micranthum Sieb.et Zucc.はミネカエデに似るが,葉,花,果実が小さい。(4)ハナノキA.pycnanthum K.Koch(イラスト) 岐阜,長野,愛知3県にまたがる恵那山山麓地方と長野県北西の居谷里(いやり)湿原にのみ自生する。北アメリカ東岸地方に広く分布するアメリカハナノキA.rubrum L.(英名red maple)ときわめて近縁で,その変種とされることもある。…

※「ハナノキ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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