改訂新版 世界大百科事典 「ハマアカザ」の意味・わかりやすい解説
ハマアカザ (浜藜)
Atriplex subcordata Kitagawa
北日本の海岸の砂地に普通にみられるアカザ科の一年草。本州では日本海側の海岸に多く,朝鮮,東シベリア,サハリン,千島列島にも分布する。茎は高さ40~60cm。外見はシロザに似ているが,葉は厚くやや多肉質である。葉は三角状卵形~三角状長卵形で,縁に欠刻状のふぞろいの鈍鋸歯があることが多い。長さ2~6cm,幅1~2.5cm。花は単性花で雌雄同株。花期は8~10月で,雄性先熟である。雄花と雌花は混生して穂をつくり,雌花は花被をもたず,2枚の向かいあった苞葉に包まれる。苞葉は花後も宿存し,大きくなって扁球形の蒴果(さくか)を包む。雄花には苞葉はなく,5本のおしべと5枚の花被がある。種子は褐色で扁平,径3~4mm。近似種ホソバノハマアカザA.gmelinii C.A.Meyerは葉が細く,種子は黒色で光沢がある。日本全土の海岸の砂地に普通に生える。
ハマアカザ属Atriplex(英名orach(e))は世界中の温帯および亜熱帯域に分布し,約200種がある。乾燥地帯や塩性地に多い。若芽や葉が食用にされる種が多いが,ヤマホウレンソウA.hortensis L.(英名mountain spinach,garden orach(e))はヨーロッパで栽培される。C3植物とC4植物があり,C4植物の代謝系の研究材料として注目されている。
執筆者:矢原 徹一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報