日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハーシュバック」の意味・わかりやすい解説
ハーシュバック
はーしゅばっく
Dudley Robert Herschbach
(1932― )
アメリカの化学者。カリフォルニア州サン・ホゼに生まれる。スタンフォード大学で数学と化学を学び、1955年に化学で修士号を取得したのち、ハーバード大学に進学、1958年化学物理学で博士号を取得した。1959年カリフォルニア大学バークリー校で助教授につき、1961年準教授となった。1963年ハーバード大学に戻り、化学教授となり、1977年から1980年まで化学部門の主任教授を務めた。またアメリカ化学学会の純正化学賞をはじめ、数々の賞やメダルを受け、アメリカ科学アカデミーの会員でもある。
ハーシュバックは、化学反応について学生のときから研究を始めた。当時の化学実験法は、従来どおりの物質を混合して生成物を分析するものであった。彼は、分子線(分子ビーム)を用いて化学反応を調べる方法を思いつき、カリフォルニア大学において分子線の研究に着手した。同じころ、J・C・ポランニーも同様の研究を行っていた。ハーシュバックはハーバード大学に移ったのちも研究を続け、分子線を真空中で交差させ、化学反応の基本となる素過程を観測する方法(分子線交差法)を確立した。その後、Y・T・リーが研究に参加し、彼の設計した装置により、分子線交差法は精度が飛躍的に向上した。1986年に「化学反応の素過程の動力学的研究」に貢献したとして、リー、ポランニーとともにノーベル化学賞を受賞した。
[編集部]