化学に関係する問題を物理学的な方法で研究する物理学の一分野。似た語として物理化学があり,これは化学の一分科とされている。しかし物理学と化学は本来,相伴って発達するものであり,化学物理学と物理化学との間には歴史的なニュアンスの違いがあるのみで内容的にはほとんど差はない。1920年以後の量子力学の発展により,化学結合や物質の化学的性質が,はじめて演繹(えんえき)的に解明されるようになり,また紫外・可視スペクトル,赤外スペクトル,NMRスペクトルなど分子分光学にも明快な説明を与えられ,実験的にも大きく発達して,化学研究の主要な武器となった。一方,量子統計力学は物質の巨視的性質の解明に貢献した。これらの基礎の上にレーザーが開発され,新しい物性の解明のみならず,実用上も大きな役割を果たすようになった。また化学物理学における研究成果は,超伝導物質,有機導電体などの興味ある材料の開発をも促している。
→物性物理学 →物理化学 →量子力学
執筆者:坪村 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
物理と化学との境界領域の学問分野。物理化学は物理的化学、化学物理は化学的物理学の意味であり、化学側から物理学の領域に拡大された分野が物理化学、その逆が化学物理学であるといえる。化学物理学では主として物質の微視的観測結果を物質の巨視的性質の説明に用いる過程をとる。今日の化学物理学の発展に果たしたデバイの功績は大きい。彼は双極子モーメントの測定理論、X線回折の理論などをたて、種々の分子の構造を明らかにした。
今日この分野で用いられている実験手段は電磁波、熱、音波などで、理論的には量子力学、統計力学、統計熱力学などが必要である。研究対象には、原子、分子の構造、化学結合論、分子間力、実在気体の状態、液体の構造、電解質溶液論、高分子溶液論、拡散や粘性、界面現象、固体の性質や構造、高分子物質のゴム弾性や粘弾性、相転移、半導体、化学反応論などをはじめ、超伝導、低温物理学などがある。最近は電子計算機が容易に使用できるようになったので、理論、実験とも大幅な進歩発展がみられる分野である。
[下沢 隆]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
化学と物理学の中間領域.しかし,これら両者から独立した一部門とはなっていない.化学に近いものから物理学に近いものまでにわたり,それぞれ化学または物理学に分類される.類似の名称の学問分野に物理化学があるが,これはかなり古くから化学のなかの一分野として確立されている.化学物理学と物理化学の間に線を引くことは困難であるが,全体的に化学物理学は物理化学よりも物理学色が濃い.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新