エジプトを中心としたバフリー・マムルーク朝の第5代スルタン(在位1260~77)。キプチャク出身のトルコ人奴隷で、アイユーブ朝に仕え、1250年マンスーラの戦いでフランスのルイ9世を捕らえて勇名をはせ、60年にはモンゴル軍をアイン・ジャールートの戦いで撃破したのち、マムルーク朝のスルタン、クトゥズを殺して即位した。17年間の治世に38回のシリア遠征を行い、対十字軍戦争では、アンティオキアなど諸都市を攻略し、十字軍を地中海沿岸に追い詰め、またイスマーイール派の要塞(ようさい)をはじめ、北はカエサリア(アナトリア半島中部)まで攻略し、南はヌビアに派兵した。アッバース朝カリフをカイロに擁立し、ヒジャーズ(アラビア半島の紅海沿岸)に勢力を伸長した。外交関係に力を入れると同時に、駅逓(えきてい)(バリード)の整備、港湾、城塞の建設など内政を整備し、マムルーク朝の基礎を築いた。彼の生涯は物語となり、広く西アジアで伝えられている。
[菊池忠純]
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1233?~77(在位1260~77)
マムルーク朝の第5代君主。アイユーブ朝君主サーリフのマムルークであったが,その死後クーデタに参加しマムルーク朝の建設に荷担。スルタンに就任後は,シリアの十字軍都市の多くを奪還するなど,十字軍やモンゴルに対して顕著な成果をあげた。国力の充実を図り,事実上マムルーク朝の基礎を築いた。その姿はアラブの著名な民間説話『バイバルス伝』に生き続けている。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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