バナール(読み)ばなーる(その他表記)John Desmond Bernal

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バナール」の意味・わかりやすい解説

バナール
ばなーる
John Desmond Bernal
(1901―1971)

イギリスの物理化学者、科学史家。バークベック・カレッジ教授となり、X線結晶学者として、鉱物質だけではなく、アミノ酸ビタミンタンパク質などの構造解析を進め、とくに水の液体構造に関する研究(1933)はその代表的なもので、今日なお進みつつある研究の第一歩となった。バナールは一般には科学史家として広く知られ、『歴史における科学』(1954)、『科学と産業』(1953)などの書物は邦訳され、広範に読まれている。とくに前者は科学史と社会史を統一的観点からとらえた、その代表作である。彼は、第二次世界大戦後、世界平和評議会副議長となり、また、世界科学者連盟の副会長を務めるなど、世界の平和運動に大きく貢献した。

荒川 泓]

『J・D・バナール著、坂田昌一他訳『科学の社会的機能』(1951・創元社)』『菅原仰訳『科学と産業』(1956・岩波書店)』『J・D・バナール著、鎮目恭夫訳『戦争のない世界』(1959・岩波書店)』『鎮目恭夫訳『歴史における科学』(1967・みすず書房)』

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改訂新版 世界大百科事典 「バナール」の意味・わかりやすい解説

バナール
John Desmond Bernal
生没年:1901-71

イギリスの物理学者アイルランド生れ。ケンブリッジ大学で学び,X線回折による結晶構造解析を発展させた。1938年からロンドン大学バークベック・カレッジの物理学教授(1963年から結晶学教授)。タンパク質やウイルスの原子的立体構造の解明先駆的な指導的役割を果たし,門下からM.F.ペルーツ,D.M.ホジキン,F.H.C.クリックなど分子生物学関係のノーベル賞受賞者が輩出した。

 若い時から科学技術と産業,経済,政治の関係に深い関心をもち,処女著作《宇宙・肉体・悪魔The World,the Flesh and the Devil》(1927)は,人工臓器や宇宙植民を柱とする人類未来論の先駆となった。その後,マルクス主義にもとづき科学史・科学社会学の著作と科学者の社会運動・平和運動を組織することに活躍し,《科学の社会的機能The Social Function of Science》(1939)や《歴史における科学Science in History》(1954)などにより日本の学界にも大きな影響を与えた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バナール」の意味・わかりやすい解説

バナール
Bernal, John Desmond

[生]1901.5.10. アイルランド,ティペラリー
[没]1971.9.15. ロンドン
イギリスの物理学者。ケンブリッジ大学に学び,その後ロンドン大学で,物理学教授 (1938~63) ,結晶学教授 (63~68) をつとめた。X線解析によって種々の化合物の原子構造を研究したことで有名。ほかに分子生物学,生命の起原,地殻の構造と組成の研究にも業績がある。また,科学の社会的責任という問題に興味をもち,マルクス主義者として,科学と社会との関係を考察,平和運動にも従事した。主著『科学の社会的機能』 The Social Function of Science (39) ,『歴史における科学』 Science in History (54) 。

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百科事典マイペディア 「バナール」の意味・わかりやすい解説

バナール

英国の物理学者。ケンブリッジ大学を出て,1938年―1963年ロンドン大学バークベック・カレッジの物理学教授,1963年―1968年ロンドン大学結晶学教授。結晶学,生化学を研究。平和運動にも努め,1953年レーニン平和賞,1959年世界平和評議会代表委員会議長。科学論,科学史,哲学,社会問題に関する著書も多い。主著《科学の社会的機能》《歴史における科学》。

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