バルチュス

百科事典マイペディア 「バルチュス」の意味・わかりやすい解説

バルチュス

フランス画家。本名バルタザール・クロソウスキー・ド・ローラBalthasar Klossowski de Rola。美術史家の父と画家の母親の間にパリで生まれ,詩人ライナー・マリア・リルケとも交流のあった環境に育つ。作家・画家ピエール・クロソウスキーの弟。1935年アントナン・アルトー演出の《チェンチー族》のために舞台美術および衣装を手がけ,またジャコメッティ親交を結ぶなど,シュルレアリスムの影響を受けつつ,ほとんど独学で絵を学ぶ。ピエロ・デラ・フランチェスカやジョバンニ・ベリーニクールベらの残した絵画の伝統に立ち返り,具象表現を追求した。マチエール構図の点では古典的な絵画の形式に添いながら,少女を主題とする夢想的な情景を描き,第2次大戦後のヨーロッパ具象絵画を代表する画家の一人となる。代表作に《山》(1937年,メトロポリタン美術館蔵),《美しい日々》(1945年―1946年,ハーシュホーン美術館蔵),《コメルス・サンタンドレ小路》(1952年―1954年,個人蔵)などがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「バルチュス」の意味・わかりやすい解説

バルチュス
ばるちゅす
Balthus
(1908―2001)

画家。本名バルタザール・クロソウスキー・ド・ローラBalthazar Klossowski de Rola。ポーランド貴族の流れをくむ旧家次男としてパリに生まれる。両親も画家であり、兄ピエールは作家。幼いころから絵画を独習し、13歳のときリルケの序文を伴う素描集『ミツ』を刊行した。1934年にパリのピエール画廊で最初の個展を開き、シュルレアリストたちから注目を浴びるが、彼らの運動に加わることはなかった。作品題材として選ばれるのは街路や室内、風景などのごく日常的な光景や人物であるが、画面は現実の世界から切り離されたかのような不思議な雰囲気をまとう。初期ルネサンス絵画や東洋美術への深い造詣(ぞうけい)に裏打ちされた古典的な技法や構図と、シュルレアリスムにも通じるような謎めいたエロティシズムに満ちたイメージで、独自の具象絵画を確立し、20世紀の美術史のなかで孤高の位置を占めている。61~77年、文化相アンドレ・マルローAndré Malraux(1901―76)の要請でローマのアカデミー・ド・フランス館長を務める。代表作に『美しい日々』(1944~46)、『コメルス・サン・タンドレ小路』(1952~54)などがある。スイス南東部ロシニエールの自宅死去

[大谷省吾]

『クロード・ロワ著、與謝野文子訳『バルテュス 生涯と作品』(1997・河出書房新社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「バルチュス」の意味・わかりやすい解説

バルチュス
Balthus
生没年:1908-2001

フランスの画家。本名バルタザール・クロソウスキー・ド・ローラBalthasar Klossowski de Rola。作家P.クロソウスキーの弟。ポーランド系の両親のもとにパリで生まれる。恵まれた家庭で絵画を独習。1930年代からシュルレアリストたちと交友。堅固な構図と重厚な画肌によって日常的な光景や少女像を描き,奇妙に官能的な白昼夢を現出させる。61-76年ローマのフランス・アカデミー院長を務めた。
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世界大百科事典(旧版)内のバルチュスの言及

【ドイツ文学】より


[叙事詩の盛衰]
 中世高地ドイツ語の時期(11~14世紀)には,シュタウフェン朝による中世の政治体制が完成,これに応じて騎士階級が新たな文化の担い手となり,伝承のゲルマン英雄伝説のうえにキリスト教文化,古典古代の文化,プロバンス宮廷文化,イスラム宮廷文化,北方神話圏文化などが合流してドイツ中世文学が生み出された。宮廷で口誦された叙事詩は,素材の点で(1)アウエのハルトマンの《イーワイン》やエッシェンバハのウォルフラムの《パルチファル》のように,アーサー王と円卓の騎士の伝説を中心にしたもの,(2)ゴットフリートの《トリスタンとイゾルデ》のようにトリスタン伝説を扱ったもの,(3)《ニーベルンゲンの歌》や《クードルーン》のように,ゲルマン伝説から生じたものなどの系統に分類できるが,個々のものはいずれも強い混合形態を示している。残存する写本が最も多い《パルチファル》は,当時最も愛好された作品と目される。…

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