バルパライソ(読み)ばるぱらいそ(英語表記)Valparaíso

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バルパライソ」の意味・わかりやすい解説

バルパライソ
Valparaíso

チリ中部,太平洋に臨む港湾都市。首都サンチアゴ西北西約 100km,海岸山脈から西に張り出した丘陵が大きく開口した湾に臨む地点にあり,市街湾岸低地から丘陵斜面にかけて広がる。 1536年建設の古い町であるが,スペイン植民地時代を通じてしばしば海賊に襲撃されたうえ,嵐,火事,地震などにより大きな被害を受けたため,植民地時代の古い建築物はほとんど残っていない。チリ独立 (1818) 後,海軍の創設と発展,ヨーロッパ航路の開設などに伴って港の重要性が増し,急速に発展,首都に次ぐ大都市となった。市街は 19世紀後半のラテンアメリカの都市,建造物発展の様子をよくとどめており,2003年世界遺産の文化遺産に登録。 1906年,1971年の地震で被害を受け,北東に隣接する観光・保養地ビニャデルマルが郊外住宅地として市の人口を吸収し始めたため,市の人口の伸びはしだいにゆるやかになり,1970年代後半,第2の都市としての地位はビニャデルマルに譲った。しかしチリ最大の港湾都市であり,チリの輸入の大部分を扱い,また国内海運における重要性もきわめて高い。また工業都市でもあり,鋳造,化学,繊維,製糖塗料衣料皮革,植物油などの工業が立地する。文化中心地でもあり,市内には工科大学 (1926) ,カトリカ大学 (1928) ,図書館,博物館,劇場などがある。埋立地を含む湾岸低地には港湾施設,倉庫,商工業地区,官庁街などが集まり,丘陵斜面はおもに住宅地区となっており,ケーブルカー,階段,エレベータ,ジグザグ道路などが両地区を結んでいる。丘陵の頂上近くには特に下層階級の人々が住み,スラム街もできている。陸上交通の要地でもあり,鉄道によりサンチアゴをはじめとする国内主要都市と連絡。またアンデス横断鉄道の起点で,メンドサを経てブエノスアイレスとも結ばれる。人口 27万 5141 (2002) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「バルパライソ」の意味・わかりやすい解説

バルパライソ
ばるぱらいそ
Valparaíso

南アメリカ、チリ中央部の第5地域(バルパライソ。人口154万2492。2002国勢調査速報値)の首都。人口27万0242(2002国勢調査速報値)。サンティアゴとその周辺地域の外港で、チリ最大の港湾都市である。サンティアゴとは鉄道で結ばれるほか、途中の海岸山脈を抜ける最短距離(120キロメートル)にハイウェーがある。またアルゼンチンのメンドサに通じるアンデス横断鉄道の起点でもある。商業・貿易都市であるとともに、繊維、皮革、食品加工、化学などの工業地帯を擁し、漁業も盛んである。市街は、港の周辺の湾を囲む半円形の丘陵斜面から丘陵上へと発達しており、急斜面の所には小型のケーブルカーが設けられている。文化の中心地でもあり、バルパライソ大学、サンタ・マリア工科大学などがある。1906年の大震災後の復興により、今日の近代都市が建設されたが、港に続く低地が限られているため、近隣のリゾート都市ビニャ・デル・マルの住宅地に居住して、そこから通勤する者も多い。

[細野昭雄]

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